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私こそが本物だった

作者: てん

貴族や民衆の集まる中でギロチンへ上る。

彼女の信者と化した周囲から向けられるのは、侮蔑 憎しみ 怒り。


「私が本物の王女だったのよ」


そんな民衆の前で叫ぶはカトリーン王女と()()()()


そして、私の首は晒された。


◇*◇


「はぁはぁはぁ」


目を覚ますと私は生きていた。

なんで?どうやって?ギロチンにかけられたはずじゃ……?


混乱する頭を落ち着かせる。

落ち着いて、私。一回頭を整理するのよ。


私はカトリーン王女だった。

王から唯一の子として育てられた。

そんなある時、ノジータ王国では流行病が流行った。それにより数多の人々が命を落としていった。それは王族までも例外なく……皆、死んだ。


そして、王族最後の人物も死んでしまった。

ここで本来であれば貴族から王となる人物を選ぶのだが、ここで問題が発生した。

王の実子だという女が現れたのだ。

私とそっくりのその女は、自身こそがカトリーン王女であると言った。

王も遺言書として書いていた。まるで、予期していたように。


“余の子は一人しかおらぬ。その娘こそがカトリーン王女である。そして、カトリーン王女を次期王に指名する”


こうして、私と彼女との戦いが始まったのだったが、彼女はあっという間に貴族も平民も味方につけてあっさりと決着はついた。


そして、私は殺された。


あぁ、そうだ。その通り。本来なら私が彼女を追い出さなくちゃいけなかったのに。私がしくじってしまった。


もうすっかり明瞭になった頭で覚悟を決める。

今度こそ、私が王になってやる!!



そして王の葬式にて、また、彼女はやって来た。

後見人たる公爵を引き連れて。


「彼女の名はカトリーン•フェレ•ローゼン。彼女こそが本物のカトリーン王女であり、国王の実子だ」


それと共に周囲にざわめきが起こる。

少なくとも今は私がカトリーン。この場を静めるのは私の役目だ。


「皆の者、静まれ。今は葬式の真っ只中。私の名を語る不届き者が居ようと、静かに王を見届けよ」


せっかく名乗り出た公爵とカトリーンには悪いが、今この場では取り押さえる。

そして、目をそらさせるように、空に魔法をかける。


「あぁ……なんと」


「……美しい」


私がかけたの魔法は静かに国を覆った。


何とか無事に葬式は終わったのだが、国王の死とすれ違うように新たな話題が人々の間で駆け抜けた。


それはやはり、カトリーン王女が二人現れたということ。大勢の貴族の前で現れたカトリーンは隠しようがなく、それを事前に予知していたかのような王の遺言書もそれに拍車をかけているようだった。


私は前回のように勝手に行動されてはたまらないので、仕方なくカトリーンを王宮に入れた。


もちろん王宮には念を入れて私の魔法をかけている。そして、カトリーンを世話するメイドには全員魔道具を持たせている。抜かりなしとはこのことを言うのだろう。


案の定、カトリーンは思うように動けないでいる。そして遂に、あの日がやって来た。


あの時と同じく周囲にいるのは大勢の貴族に平民。あの時と違うのは、後ろに公爵しか携えていないカトリーンのみ。


そして、カトリーンは言った。


「私こそが本物よ!」


それは乱雑で大雑把で、あの時は率いていたからこそ勇敢に見えたが……今はむしろ品が無い。


「ほう、何が証拠だ?見せて貰おう」


すると、カトリーンは自身の胸を張って言った。


「私は公爵様から言われたわ!それに……みんな出て来て!!」


カトリーンは何者かに呼びかけた。だが、いくら待っても誰も出て来ない。


「なんで、なんでみんな出てこないの?ねぇ、出て来てよ!出て来なさいよっ!!」


混乱ばかりのカトリーンに私は話しかける。


「カトリーン。それは、これのことか?」


私が見せたのはとある魔道具。


「何よ、それ」


カトリーンが少し苛立ったように言う。


「これは、私が新しく作った魔道具だ。これには少々不思議な効果があって」


そう言って私は魔道具にある魔法をかけた。

すると、白かった魔道具はみるみる赤く染まっていく。


「このように、ある魔法をかけると色が変わるのだ。そして、カトリーンを王宮に来させてから皆周りの者にこれを持たせたのだが……なんと色が変わっていたのだ」


そう言ってもう一つの魔道具を出す。


「何言ってんのよ。魔法ぐらいで何かが変わるとでも?そもそもとある魔法って何よ!」


カトリーンはイライラしながら言った。


「魅了魔法だ」


「は、はぁ!?そもそもあんたが捏造した物かもしれないじゃない!」


「ならば、そこにいる公爵に付けさせるか?」


「べ、別にそこまでする必要はないじゃない」


私は騒ぐカトリーンを無視して公爵に付けさせる。

すると、魔道具はみるみると赤く染まっていった。


「これで確実だな。おい、この女を連れて行け」


女はまだ何か騒いでいたが、全て無視して連れて行かれた。


「皆の者、すまない。このような茶番に協力させて。魔女は去った。私が本物のカトリーン王女である」


カトリーンが連れていかれた今、本物は私一人。

同じ人物は二人もいらないのだから。






カトリーンが偽物となった素晴らしい夜、本物のカトリーンはカトリーンであった者の所へ向かっていた。


薄暗い牢の中、カトリーンいや、元カトリーンはいた。

そして、カトリーンは言った。


「あなたが本当は本物だった」


すると元カトリーンはふっと顔を上げた。


「あなたと私は、顔も能力もほくろの位置でさえ全て同じ。でもこれっておかしいと思わない?双子でさえ何らかの違いがある。だけど私達にはそれがない。何でか分かる?」


元カトリーンはゆっくりと頭を横に振った。


「理由は簡単。私がドッペルゲンガーだから」


元カトリーンは目を丸くした。


「私はあなたのドッペルゲンガー。あなたがまだ幼い時に王と契約を結ばさせられた。あの王は何か不思議な力を持っていた。そこで気づいたんでしょうね。あなたが将来やらかすことに」


そう。あの王は異常だった。ドッペルゲンガーである私に、娘は将来やべぇ奴になるかもしれないから、本当にやばかったらお前が娘になれ、とか言い出すから。


「ま、それだけ伝えたかっただけ。まぁ、私が本物になった今、あなたは明日死ぬことになるけど」


元カトリーンの顔からは何も読み取れない。

本物だったあなたは何を思うのだろう?


ま、一つ言えるのは、今この世界において私こそが本物のカトリーン•フェレ•ローゼンであることぐらいかな。


読んでいただきありがとうございます。


分かりにくいと思うので補足です。


本編から言うと、一回目が本物のカトリーンが魅了魔法で全ての人々を操ってドッペルゲンガーのカトリーンが殺されたと言うことになります。魅了魔法を全国民にかけている辺り、死んだ王の言っていたやべぇ奴、ということですね。


また、ドッペルゲンガーカトリーンと契約したときに本物カトリーンを殺せばこんなことにならないじゃんと思うかもしれませんが、そうもいかないのです。ドッペルゲンガーはあくまでドッペルゲンガー。本物でないうちは本物が消えたら消えちゃいますから。だから最後ドッペルゲンガーのカトリーンは退場したカトリーンを殺せた訳ですね。


ちなみに所々でドッペルゲンガーのカトリーンが魔法をかけるシーンがあったと思いますが、それも全て魅了魔法から守るためですね。それが無ければ少なくとも平民は本物カトリーンの味方になっていたでしょう。

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