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幕間 とある天使の追憶

 昔あるところに、天使の女の子がいました。


 天使の女の子が住んでいる家は、他の天使が暮らす聖域から遠く離れた、とても小さな島にありました。


 家族はお父さんとお母さん。離れ離れだけどお姉さんもいました。


 みんな本物の天使でしたから、島の人達から尊敬はされていましたが、誰も友達にはなってくれませんでした。


 それでも女の子は幸せに過ごしていました。


 お父さんもお母さんも、女の子を愛情いっぱいに育ててくれたからです。


 けれど、天使の女の子がいくら聞いても、答えてくれないことが一つだけ。


 ――どうして私達は、聖域の外で暮らしているの?


 もちろん女の子は、小さな島の生活が幸せでしたから、聖域で暮らしたかったわけではありません。


 ただ不思議に思っただけなのです。


 どうして自分が他の天使と違うのか、と。






 そんなある日、お父さんは重い病気になってしまいました。


 お母さんはお父さんの代わりに働くことになって、遠くの島に行きました。


 女の子は一生懸命お父さんの看病をしましたが、お父さんは助かりませんでした。


 最後の夜に、天使の女の子はお父さんとこんな話をしました。


 ――エヴァンジェリン、よく聞きなさい。

 これから辛いことや悲しいことがたくさん起きるだろう。

 だから、友達をたくさん作りなさい。

 お互いに助け合える友達を。同じ目線に立てる友達を。

 私も友達には助けられたものだからね――


 女の子は泣きながら、心の中で悩みました。


 だって、誰もお父さんを助けてはくれなかったのですから。


 お父さんが言っていることが本当に本当なのか、女の子には分からなかったのです。






 天使の女の子は、島の人達に手伝ってもらって、ささやかなお葬式をしました。


 お母さんはまだ帰ってきません。女の子は一人ぼっちでした。


 そんなとき、心ない天使が島にやってきました。


 心ない天使は女の子の親戚だと名乗って、お父さんの悪口をたくさん言いました。


 お父さんとお母さんが隠していた秘密、家族が天界にいられなくなった理由も全部喋ってしまいました。


 自分達がただの天使に貶されたのは、女の子のせいだと責め立てました。


 本当にひどい言い方で、何もかも、何もかも。


 天使の女の子はとても悲しくなってしまいました。


 けれど、少しだけ嬉しくもありました。


 お父さんは嘘を吐いていなかったと分かったからです。


 お父さんのお友達は、女の子を助けるために大事な宝物を貸してくれたのです。


 宝物が盗まれてしまった後も、お父さんを助けようと頑張ってくれたのです。






 心ない天使がいなくなってからしばらくして、今度は聖騎士見習いの女の子が島にやってきました。


 聖騎士見習いの女の子は、お父さんのお墓に礼儀正しくお参りをしてから、天使の女の子の前にひざまずきました。


 その子はとても丁寧な口調で言いました。


 ――私はあなたの御父上に命を救われました。

 全てを失った孤児だった私を助け、天使教会の保護を与えてくださいました。

 聖職者にも、聖騎士にも向いていない粗忽者ですが、せめてあの方に恩を返したいと思っていたのです。

 しかし間に合わなかった。

 どうかお願いします。

 あのお方への恩返しのため、私をあなたの守護騎士にしていただけないでしょうか――


 天使の女の子は首を横に振りました。


 そして膝をついて騎士見習いの女の子と同じ目線になって、満面の笑顔を贈りました。


 ――私は特別じゃありません。偉くなんかないんです。

 だから代わりに、友達になってくれませんか。私の初めての友達に――

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