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再会

短編と同じタイトルにするには、内容が合わなくなってきそうでしたのでタイトル変更しました。

本文の内容は変更していません。

いつもの様に早く起きてしまった。


アメリはいつもと違う部屋の天井を眺めてぼーっとしていた。

昨日夜会の後、用意されていた客室に一泊したのだ。


侍女として同行してきているメリーアンが続きの間にいるはずだが昨日事前に伝えて置いた起床時時間よりもまだかなり早い時間のためまだ起きていない。


「二度寝をしようか、それとも少し庭を散策してみようか。」


朝から城の中を歩くにはアメリは『変装』しなければならない。

流石にそれは一人でその支度は難しい。そして幸い念のためにメアリが着る洋服も持参している。アメリにちょっとしたいたずら心がぴょこんと芽生えた。


「少しだけ、侍女見習のメアリが城の探検しても、怒られないよね。」





侍女が訪問着として着るドレスに着替えたアメリはこっそりと廊下へ出た。遠くで人の話し声がする。こんな時間に見回りの者だろうか?

アメリは人に出会わないように気をつけて歩いていると厨房らしき扉を見つけた。少し離れているがパンの焼ける良い匂いがする。朝食の準備はこんない早くから始まっていると言う事に彼女は驚いた。


「そう言えば、私がいつもお店に行く頃には料理人の方たちは皆いくつものパンを焼き上げ終わっているわ。彼らは何時に起きているのかしら……。」


城にいると料理人はアメリ相手にかしこまってしまい雑談をしてくれない。

しかしメアリになって店にいる時は、最近時間が空くと少しだが雑談に応じてくれるようになったので、聞いたら教えてくれるかも知れない。


アメリは厨房に部外者が近寄るわけにはいかないのでそのまま通り過ぎ通用口らしきところから外に出た。早朝の冷たい空気に少しプルっと身体を震わせてメアリは出入口近くに置かれている木のベンチに腰かけた。


夜明けとともに小鳥のピッピピピと鳴く囀りが遠くで聞こえる。


「やっぱり朝は気持ちいいなあ。」

アメリは手足をん、と伸ばして朝の空気を吸い込んだ




「そうですね」


返ってくるはずのない相槌に驚いて、伸ばした手足を縮めることなく相手を見つめた。

そこには『ガロもしくはアルス』がいた。


「廊下でお見かけしたときは気のせいかと思ったんですが。やはり貴方でしたか。メアリさんでしたよね?」

「はい、メアリです。えっと確かパン屋のお客さんで……アルス様ですよね?」


アメリは伸ばしたままの足と腕を慌てて元の位置にもどした。


「覚えていただいていたんですね、恐縮です。こんなところでお会いするなんて驚きました。隣に座ってもよろしいですか?」


アルスはアメリに隣に座る許可を貰うとそっと隣に腰を下ろした。


今日のアルスは若い男が好んで着るような黒いパンツ姿に青いシャツを着ているだけのとてもラフな格好だった。落ち着いた紳士の格好も素敵だったがこのような服装も良く似合う。


「で、なぜここにいるんです?」


アルスは口元に笑みを浮かべながらアメリに尋ねるように言った。


「昨日、母のお手伝いで侍女見習いとしてついてきたんです。母はメリーアンと言ってアメリ王女の侍女頭をしています。」

アメリはあらかじめ用意された設定をスラスラと述べた。その間、アルスの視線が自分に向いていることがとても気になってしまい、鼓動が速くなる。


アメリが話し終わってもアルスはじっとアメリを見つめたままだ。

間が持たなくなって、アメリは気になっていた事を聞いてみることにした。


「あ、アルスさんは……こちらにお勤めなんですか?王子様と同じ名前なんですね。この国は多いんですか?アルスって名前。」

「そうですね、多いかもしれません。昔からある尊い方の名前らしいですから、親があやかってよく付ける名前です。」


なるほど、そうなるとアルス王子に同行するときに名前が被る事を防ぐ為にあの時『ガロ』と名乗ったのだろうか。


アメリが勝手に推理をしていると不意に、アルスに頬を触られた。ピクリと反応すると触った方も慌てて手を離した。


「すいません。痣が痛々しくてつい……。」

「いえ、痛くはないので大丈夫です。見苦しい顔ですいません。」

「そんな事ないですよ、こんな老人が言うのも失礼ですが、いつもお会いするときに可愛らしい方と思っています。」


アメリが思わす謝ると、アルスは照れくさそうにいった。ほんのり彼の顔が赤く見えるのは気のせいだろうか。


その顔が可愛く見えて、貴重なものを見られた嬉しさについに顔が緩んだ。ふと我に返り、痣のある顔がにやりと笑う姿は、さぞや不気味だろうと思ってアメリは慌てて顔をそむける。


一瞬、怪訝な表情をしたアルスだが何か思い当たったようでそっとベンチに置かれたままのアメリの片手を握った。


「私は、痣を気にしていませんので。こちらを向いてください。メアリさん。」

「はい……。」


アルスに言われてオズオズと振り向いたアメリは真っ赤な顔で頷いた。

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