東京雲海
デパートの小冊子にホテル椿山荘の東京雲海の記事があった。
以前ネットのニュースで秩父の雲海の記事を読んだことがあった。
しかし、東京の雲海とは、どの程度のものかと
少々首をかしげながらも興味が湧いた。
ネットから得られた情報によると、
国内最大級の霧の庭園の演出が 東京雲海だそうだ。
詳しい説明は、公式ホームページに譲るが、
ホームページの画像やネットの評判は上々で、
非日常を体験できる幻想的な風景が公式ホームページに載っていた。
椿山荘ならサービスも間違いなく、素晴らしく快適な時間を過ごせる予感がする。是非、行きたいものだ。
さて、骨髄移植後の移植片対宿主病(GVHD)抑制のために
服用している免疫抑制剤の服用もかれこれ3年に及ぶ。
この薬のおかげで生きながらえているものの、
色々な副作用があるのも事実である。
筋力の低下による体重の減少・痔にもなりやすくなる。
それ以外で一番困っているのが、白内障である。
自分の場合、本当に急に進んだという印象がある。
骨髄移植後、永らくドライアイに悩まされていたが、
少し前から急に見えにくくなってきた。
ついに老眼かと思っていたら、白内障だった。
医師は何人もの症例を診ているから詳しいのだろうが、
こちらは初めてなので、何もわからない。
そうこうするうちに、どんどん視界が曇ってきた。
健康維持のために夏はレモン水・冬はホットレモンを
毎日一杯欠かさないようにしているのだが、
先日ホットぽん酢を作ってしまった。
ラベルがよく見えないので、
蓋の色だけで判断したのが間違いだった。
珍しいもの見たさで試される方以外には、
お勧めできない、実に不味い飲み物だった。
視界がはっきりしないと、本当にイライラするものだ。
車も運転できず、自転車にも乗れない。
移動範囲は徒歩のみであるから、勢い行動範囲も狭くなる。
とても不便である。
また、無理して見ようとするためか、夕方には眼精疲労からか
痛みも出てくる。まさに踏んだり蹴ったりである。
今では、裸眼で0.7であった視力はあっという間に
視力表の一番上がようやくというレベルになった。
しかも、全体的に曇っているので、文字や人の顔もよく見えない。
新聞も小説も読めないし、
近所で人に会っても、気づかないので愛想の悪いおっさんになってしまった。
ある日、自宅近くの根津神社に犬の散歩に行った際、
日の光がまぶしく、視界すべてがキラキラした世界になった。
風が強くて、銀杏の葉が舞っていた。
銀杏の葉は、日の光を受けてまばゆい金色に輝きながら降っていた。
それはまさに、極楽のような美しい光景だった。
白内障の影響で、眼に中で光が乱反射するために
視界が曇ってしまうのだが、明るい光の下では
まるで雲の中にいるように見えるわけだ。
思わず、歩みを止めてしまった。
白内障になって、滅入ることが多かったが、こんなにも美しいものが
見られるとは想像してもいなかった。ケガしたわけではないが
怪我の功名である。
まさに東京の真ん中の根津神社で雲海に包まれたような光景を
体験することができるとは。
その日は、一日とても幸せな気分のまま過ごすことができた。
病気が治ったら、ぜひ本物の東京雲海を体験するために
ホテル椿山荘に泊まりたいものだ。
できれば、秩父の雲海も見に行きたい。
きっと素晴らしい時間を過ごせるだろう。
今から楽しみだ。