いや、まあ、その。 7
あたしの周りに、父ちゃんの小隊の男どもが、集まってきた。其れも、商売女の匂いをぷんぷんさせながら。その辺りに対して、結構理解のあるあたしでも、一寸気分の良いもんでも無い。
此所にレイの姿がなかったのは良かった。流石に、そんなことを為てきたって言うのが判ったら、一寸平気でいられなかったところだ。そういった事に理解のあるあたしでも、あからさまに遊んできましたって言うのは、頂けないんだよね。
遊んできても良いから、簡単に遊んできたのが解らない様に為て貰いたい。勿論、此れは無茶だって事は判っているんだけど。キッチリ騙しておいて欲しい。無理だろうけどねぇ。
此れでも立派な女だから、男の嘘なんか簡単に見破れちゃうんだ。昔のあたしはそん事事にも気付かないで、良い男を見逃していたんだよね。
多少は遊んでいても、そう言う事を全く気付かせないくらい遊び慣れているか、緩くて真面目かって感じかな。顔の方は、そんなに気にしても仕方が無いって事は、いやという程経験済みだしね。こっちに来てからは、綺麗なもんなんだけどね。
何しろ、彼の父ちゃんだから。あれの目をかいくぐって、未だ子供って言えるあたしに手を出してくるような、剛の者は少なくとも、この辺りには一人もいなかった。
父ちゃんの目をかいくぐって、いけない事を教えてくれたのは、死んじまったニックくらいかも知れない。色気のあることは、殆ど無かったんだけどね。例えば鍵開けのテクニックや、足音を立てないで歩く方法とか。餓鬼に教えて良いことじゃないよね。
「なんだ御嬢も来てたんだ。マリア御嬢様の面倒を見ているんでしょう。御嬢様は走らないんですか」
後から追い着いてきた、小隊の奴が声を掛けてくる。此奴は確か、マリアのことを気に入っていたんだった。商売女の臭いをさせて言うことじゃないよね。少しは考えろ。
マリアだって、立派な女なんだから、こう言う臭いをさせている男が何をしていたか、気付かないわけが無いんだから。嫌われちまうぞ。あれの方が、あたしより潔癖な本当の、お姫様なんだから。口は悪いけれどもね。
「辞めろ。追いかけてくるんじゃない」
次々と集まってくる、小隊の連中を見て、あたしは思わず叫んでしまう。奥様達が、あたしらのことを見ていることに気が付いてしまったから。もう、手遅れかも知れない。統べては終わってしまった。
あたしの計画を、元に戻さなければならないかも知れない。折角、大手を振って、村に戻れるかも知れなかったのに。忌々しくもいい顔をして、笑う男どもの顔がにくい。父ちゃんから、休みを貰ったなら、大人しく街で遊んでいれば良かったのに。
いったい父ちゃんは何処に行っていやがるんだ。女遊びには行っちゃいないだろうけれども、何を遣っていやがるんだろうな。
父ちゃんと一緒にいたはずの、後でレイの奴を締め上げてやろう。彼奴は確か、酒は飲めなかったはずだし。きっと素面だっただろうから。此奴らに来たところで、自分のお楽しみしか頭になかっただろうから、ネタは持っていないだろう。
父ちゃんも偶には、女遊びに行けば良いのにとは思うけど。少しは柔らかくなってくれないと、あたしが男を捕まえにくくなるじゃないか。何しろ、彼の父ちゃんがいるのに、あたしと遊ぶなんて、よっぽどの大物じゃないと出来やしないからね。
何処かにそう言う大物がいないかな。居るわけ無いか。




