双子なんだよ
「ここで一番権力を持っているのは、お嬢様です。其れと同時に、一番大きな責任がお嬢様にはあるのです」
と、ドリーさんが突然はなしに割って入ってきた。本当なら此れはやっては行けない事で、いわばマナー違反。あえて其れを遣ってくれたのには、あたしは感謝したい。
実際あたしの立場からは、あんなことは言えない。今のあたしは使用人にしか過ぎないのだから。あれ、彼女も使用人で、そんな事を御貴族様に言得なかったはず。
マリア・ド・デニム伯爵令嬢の表情からは、ドリーさんの言うことは素直に聴く様子が垣間見える。彼女はドリーさんに対しては、素直に聴く耳を持ってしまうくらい信頼しているのかも知れない。あたしもドリーさんぐらいには信頼を獲得しなければ行けないのかな。
伯爵令嬢は小さき頷くと、タンドリンさんに声を掛けた。
「では、リコの説明の通りに作業を始めなさい。くれぐれも怪我の無いように気を付けて」
「オーー」
まるで戦の前みたいなときの声が上がる。村の衆の顔が明るい。皆後領主様は皆を見捨てないと言うことが、実感できたので喜んでいるのだろう。この辺り一帯を支配している、デニム家の一人娘がこの村まで出てきて、陣頭指揮を執ってくれることで、安心しているのだ。本当は、デニム伯爵夫人か伯爵が来てくれた方が良かったけれど、それでも次をになう娘が来ることが大きな意味を持っていた。
伯爵家はこれぐらいのことでは、見捨てたりしないと言うメッセージは、平民にとっては大きく心を支えてくれる物なのだろうか。前世で起こった、大惨事の時のニュースで見た姿を思い出した。
マリア・ド・デニム伯爵令嬢をここに来させるのは、どうなんだろうと、あたしは思っていたのだけれど。 皆を安心させるのには、大事なことだったんだなと思う。
それでも、結構分厚く護衛を付けているかくいうあたしも護衛の一人には違いないのだけれど。
本当なら、普通の親なら、あんな事が遭ったばかりだから、安全な場所から出したくないだろう。それでも、貴方達の支配者はちゃんと考えていることを示すために、あえて彼女を派遣することを決断した。あたしの生みの母親は、すごい人なのかも知れない。




