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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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圧迫面接を終えて 4

 アリス・ド・デニム伯爵夫人は、前に座る苦虫をかみつぶしたような、表情をして此方を見ている、弟の顔を眺めながら、小さく溜息を付いた。食事室のテーブルの上には、冷え切ったお茶が残っている、カップが二つ取り残されていた。

 この部屋を暖めている、暖炉の火は少し小さくなってきており。そろそろ薪をくべなければならい頃合いである。当番のメイドが、部屋のノックをしてくる頃合いだろうか。

 話し合いは未だ終わっては居ない。

 火の当番のメイドが、扉の戸を叩く音が鳴った。人払いを為て居るとはいっても、暖を取る必要に迫られて、薪をくべる仕事を任されている、者を止めるわけにも行かない。

 ディーンは、彼の興奮した顔を見事に引っ込めて、ノックをしてきた者に応える。

 アリス・ド・デニム伯爵夫人は、そのタイミングで椅子から立ち上がり。窓の方に、視線を向けた。


「失礼します。薪を補充に伺いました」

「……」


 幼い女の子の声音が、扉を開ける音と共に聞こえてくる。見習いメイドの少女の声だっただろうか。流石の彼女も、今年雇ったメイドの姓名までは、把握していない。恐らく側にある、村の娘だろう。

 この部屋からは、砦の中庭が見渡せる。高価な窓ガラスが、使われているお陰で、この部屋は明るくて居心地が良い状態を確保されているから。だから、この部屋は砦の中でも、高貴な客人のための部屋となっていた。

 此所は砦なのだから、住空間としての機能は二の次になる。それでも、時折やってくる、客人のために、こう言った部屋を用意しているのだ。

 十歳くらいのその子は、薪用のワゴンを押しながら、部屋に入ってくると、自分の仕事だと言わんばかりの態度で、暖炉の側に薪を下ろし。暖炉の火の様子を確認すると、火かき棒を使い起用にかき回すと、新しい薪を置いた。そして、真剣な表情をしながら、火が大きくなるのを見詰める。此れが彼女に与えられた、仕事なのだろう。

 十歳の少女の仕事としては、かなりの重労働のように見えるけれど。此れもメイドの仕事の一貫である。

 この幼いメイドが居る内は、弟との話し合いを再開するわけにも行かず。アリス・ド・デニム伯爵夫人は、窓の外に見える中庭の視線を落とす。其処には、ナーラダのリコが背の低い私兵を伴って、軽く準備運動を始めていた。

 最近のマリアは、ナーラダのリコと一緒に庭を走る様子を見かけている。其れが、日課になっては来ていた。其れを此所でも行おうというのだろう。

 もっとも、あれはナーラダのリコの日課であったのが、マリアも引きずられてするように成った事だ。いわゆる鍛錬の一貫で、リコが幼い頃から続けていたことらしかった。

 伯爵令嬢としては、全く必要の無い鍛錬で、外聞の悪い物ではあるのだけれど。自分の昔のことを考えると、余り強く言うことが出来ないでいた。

 そのお陰で、マリアのコーツイをする姿勢が格段に良くなった。立ち姿も綺麗に見えることは、アリス・ド・デニム伯爵夫人も是とする物である。


 


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