圧迫面接を終えて 2
アリス・ド・デニム伯爵夫人の直径となる子供は、呪われた双子の他には居ない。そして、今となってはマリアただ一人だ。
何よりこの辺りでは、神じれれている迷信の中に、双子は家を滅ぼすと言うことが広く信じられている。だから、王であった御爺様はナーラダのリコを森に捨てた。その事を、アリスには責めることも出来なかった。
マルーンの存続のために、最善を尽くす。其れこそが、マルーン王国の王たる物の勤めと信じる、御爺様はその後に起こる災いを避けるために、身内の命でまかなうことを決断した。
此れまで起きたことを知っている、アリス・ド・デニム伯爵夫人はナーラダのリコを森に捨てたことは間違いだと知っている。彼の達に起きた、災厄は双子がいようと居まいと、関係なく起きてしまうのだから。
かえって、ナーラダのリコを捨てることで、この邦第一の手練れを失い。御爺様は何者かに忙殺されてしまい。彼女の両親も、その際のどさくさに紛れて、命を失ってしまった。
この事件の首謀者は、未だに見付けることが出来ないでいた。何よりその当時の彼女は、命がけで産み落とした、双子の一人を失って、其れを命じたのが身内だと知って、心の在り処を見失っていたのだ。
何よりも、野蛮人からの支配に落ちるよりは、よりましな選択をしたにも拘わらず。別の意味で、辛い支配下に置かれることに成り。調査をすることも、中々出来なかったのである。
マルーンの民にとって、僥倖だったのはこれ以上の混乱に見舞われなかったことだ。野蛮人の国も、何か不都合なことがあったのか、動きが止まってしまっていた。後で判ったことだけれど。
彼の国の中で、権力者同士の小競り合いが起きていたらしい。国が大きくなるのも、善し悪しと言うことだろう。
あの時、いち早く彼の国の中で起きている、混乱に気付くことが出来たら。国の形はまた違っていたかも知れなかった。
アリス・ド・デニム伯爵夫人の正面に座っている、ディーン・デニム子爵が一つ溜息を付いた。考え事をしている、アリスの意識が浮上して、彼の苦悩に満ちた表情を捕らえる。
アリスは既に起こってしまったことを考えても仕方が無い。そう判っていたとしても、如何しても考えてしまう。彼の混乱の時、本当の敵はどちらだったのだろうか。若しかすると、彼の野蛮に人の国ではなく、今自分達を支配している王国こそが敵だったのではないだろうか。
「マリアの影としては、及第点を遣っても良いのでしょう。彼女のことを良く知らなければ、見分けなど付かないでしょうから。御爺様の命令を、ウエルテス・ハーケンは実行していなかったのでしょう。其れを見張っていた、リントンも協力したのかも知れない」
「そうだとしても、私は其れを問うつもりはありませんよ。何より、そのお陰でマリアは戻ってきたのだから」
「其れで、不問とするのですか」
「其れだけではありませんよ。あの子が生きていて呉れただけで、私に取っ手は嬉しいことなのだから」
アリスは頬を綻ばせながら言った。彼女にとっては、愛のない関係の中で産まれた子供ではあるけれど。それでも、命がけで産んだ子供には違いないのだ。
此れまで、ずつと見ているけれど。自分の子供の頃を、良く思い出させてくれる。
彼の街中での一見も、リントンに踊らされたとは言え。その行動力には、驚かされた。




