姉妹だよ
「そろそろ仕事には入りたいのですが」
ロジャー・タンドリンさんが、何故か揉めているあたし達に声を掛けてくる。その顔には大粒の汗が流れている。同じ顔がそろって、言い合いをしている様はなんとも言えない事だろう。
なんか本音としては、早く河川の側の涼しいところへ待避したそうである。こういったドカチン系の事は大変苦手なタイプみたいだ。だから、頑張って爵位を手に入れたいのだろう。平民が爵位を手にするには、めざましい功績を挙げなければだめなんだけれど。普通は、まずほとんどの平民が文字が読めない。従って、爵位を手にするためには、兵士になる以外無いのである。しかも、でたらめなぐらい強くなんないと、騎士に成れない。其れなりに学問を修めていなければ、爵位を維持することが出来ないらしい。
あたしは、ロジャー・タンドリンさんと親しくお話しした事が無かったので、人となりはあまり解らない。いずれちゃんとお話ししなければいけないと、心のメモリに書き込んでおく。すぐ忘れるかも知れないけれど。
「ねえ・・・。だなされたと思って、とりあえず工事をするように命じてみない」
「なんで私が貴方に命令されなければ行けないの」
「あたしでは仕事の説明は出来るけれど、其れをするように言うことが出来ないからですよ。奥様に言いつかっておりますのは、早くこの集落を嵐の前の状態に戻すことでございます。其れが出来るのは、貴方様しか出来ない事です」
あたしがそう言うと、彼女は何となく黒い笑い顔を浮かべる。悪役令嬢らしい笑い顔だ。このままだと、立派な悪役令嬢に育ってしまうんじゃないだろうか。内戦からの隣国からの侵略。その手引きをする、マリア・ド・デニム伯爵令嬢って言うシナリオが成り立ってしまう。
嫉妬から外国の勢力を引き入れて、国のシステムそのものを乗っ取らせてしまう。そして、そうすることで多くの犠牲者を作りだし。国そのものが無くなってしまう。
この子をなんとかしてあげないと、今回より酷いことに成ってしまう。だって、押し寄せてくる軍勢は、デニム伯爵領の国境を越えてくる。そして、領都を踏みつぶして、領主の館を占領することで、王都への道を確実な物にする。
その時に、アリス・ド・デニム伯爵夫人は首を落とされて無くなっている。
アリス・ド・デニム伯爵夫人が、私兵達の指揮を執っているスチルを見た記憶がある。その背景には、屋敷を取り囲む軍団が存在している。援軍が居なければ絶対助からないよね。
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