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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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育ちの悪いお姫様 Ⅸ

 鏡を持ったまま、あたしの顔を見詰め返す何処か田舎娘を連想させる、メイドさんが驚いたように、あたしの事を見詰め返す。因みにこう言った仕草は、使用人にとっては不作法とされている。

 あたしもメイド長のサンドラさんに、何度も注意されている。最近は諦めたのか、そう言った細かい仕草に対して、咎められることが無くなった。

 リサに言わせると、あたしの立場はメイドと侍女の間みたいな感じになっているらしい。確かに、あたしはマリアの文句を言ったりするし。其れを誰も咎めてこないから。そう言う物だって、皆思うように成ってきていた。なんでそう言う事に成ったのか、あたしには解らないのだけれど。若しかすると、あたしがマリアの命を助けたからなのかも知れないと思っている。

 あたしはなんちゃってマリアとメイドだ。だから、其れなりに優遇されている。その優遇は、結構大きな物に成っているのかも知れない。

 こうしてなんちゃってマリアをしていると、メイド達はかなり気を遣っているのが判るから。いわゆる貴族の御嬢様に対して、直接会話をす事はない。指示は侍女の仕事で、マリアが直接メイドに話しかけることは無い。

 其れが、あたしは時によっては口喧嘩をしていたりするからね。こう考えてみると、あたしの立場って、取っても不思議。


「此方こそありがとう御座います」

と、メイドさんが言葉を呟いた。何となくあっけにとられている様子だ。


「ご苦労様です。此所は良いですから、食堂の方を手伝いに行きなさい」


 シーラ・ロックトンさんの命令口調が強くなった。

 鏡を持ってきてくれた、メイドさんは後で咎められしまうかも知れない。

 一寸其れは、あたし的には嬉しくないかな。口添えしておこうかしら。

 話しかけたのは、あたしの方なのだから。そう言う事で、叱られるなんて可笑しい事だと思うしね。


「ロックトンさん。彼女は、私にお礼を言ってくれただけですよ。私は、彼女の言葉を嬉しく思っておりますわ」


 うーん。一寸不自然だっただろうか。それでも、あたしの心からの思いなんだよね。貴族だからと言って、誰かに何かをして貰ったら、お礼ぐらいは言っても良いんじゃ無いかと思うのよ。それに、答えたからと言って、咎められるような物じゃない。


「マリア様。本当にお変わりになりましたね。私がお目にかかったのは、ちょうど一年前でしたでしょうか。その時には、模範的な御嬢様だったと記憶しております」

「私も成長する事もあります。彼の忌まわしい出来事から、色々な経験を致しました。私が変わっていたとしても、それは良いことでは無いのかしら」


 うわっ。此奴はマリアのことを知っていたよ。つまり、此奴を誤魔化さないと行けないって訳だ。もしかして、あたしの事を見張っていたのは、此奴なのかも知れないな。

 慎重に相手しておかないと。張れてしまうかも知れない。


「確かに、彼の出来事を聞いたときには、私も心から心配いたしました。其れが、貴女の考え方を変えてしまったのでしたら、仕方の無いことかも知れませんわね」


 兎に角、あたしがなんちゃってマリアだとは疑われていないみたいだ。内心、ホッとしてしまう。張れたら、あたしが使えないって事に成っちまうから、あたしのお願いを聞いて貰えない。彼の書類を使えば、彼の家族をナーラダ村に移住させることは出来るだろうけれど。あたしは行けなくなっちゃうからな。




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