育ちの悪いお姫様 Ⅴ
「そう……其れは良かったわね。貴女、この三ヶ月でそんなに、確りした受け答えが出来るようになったの。君は取っても優秀なのね」
どうしようか、あたしは必死に考える。取りあえず、この子が前世持ちなのか、それとも普通にこの世界の住人なのか。もし、この子がゲームさくらいろのきみに・・・の知識を持っていれば、もしかして協力してくれるかも知れない。
それでも単なるメイドでしか過ぎないから、その辺りは期待できないかも知れないけれど。
「いえ、そんな事はありません。私の母がこう言った話し方をする人でしたので、如何しても似てしまって。此所へ奉公に上がるまでは、少し反発もしていたのですが。いまでは、この話し方で良かったなと思っております」
と、カナハのサウラが答た。少し頬が赤いかも知れない。
カナハのサウラの母親は、彼の屑野郎の戯れに付き合わされて、御屋敷を追い出されて、このマルーン邦に流れてきた。この世界では良く在る話しだ。あたしはその辺りは、気に入らないんだけれどね。
因みに、この手の話しは流石に、ゲームさくらいろのきみに・・・の中では深く掘り下げられていない。
ここに住んでみて、初めて知ることの出来る。リアルな世界の常識って奴だ。あたし程度の年齢でも、昔と変わらない汚い大人ってのは、何処にでも居たりするんだ。
何よりナーラダ村にも、結構居るには居たからね。だからと言って、そう言うオッちゃん達を不潔なんて思わない。あたしだって、其れなりには不潔で汚いこともしていたからね。何より、そう言うオッちゃん達は良い金づるだったからさ。
そう言ったオッちゃん達が居たから、リタの母親も生活が出来ていたんだしね。村のおばさん達にとっては、気に入らない女だったらしいけどね。生きるために、そういった事をしなければならない、女なんて掃いて捨てるくらい居るからね。
そう言う意味で、リタの母親は、昔のあたしよりはましだったと思う。何しろ、昔のあたしは遊ぶ金ほしさにしていたから、それよりはましなのかも知れないからね。
どうやって、この子のことを聞いたもんだろうか。取りあえず仲良くなるのが先決かな。そうしないと、話しだって真面に聴くことも出来ないだろうし。
それどころか、乙女ゲームさくらいろのきみに・・・のことなんか聞くことなんか出来ない。レイの奴は前世の記憶のあるタイプでも無かったし。この子は如何だろう。
だいたい前世の記憶なんて、持ちかけたら、頭が可笑しいと思われるだろうし。だいたい、信じられないだろう。
あたしだって、こういった事を話すことには、結構ハードルが高い。いくらあたしだって、悪魔付きとか言われたくなんか無いからね。いくら呪われた、双子の片割れだってさ。




