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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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育ちの悪いお姫様 Ⅱ

 さて如何したものかな。あたしが今着ている物は、いわゆる寝間着って奴だ。本来の御嬢様なら、この時間に起きていたりしない。未だ寒いから、彼女なら目が覚めていたとしても、布団に入っていることが普通なんだよね。

 隣小部屋に待機しているはずの、メイドさんは既に起き出して、動いているのが判る。耳が良いのも考え物で、何をしているのかも、それに在りに判ったりする。恐らくメイド服に袖を通しているんだろう。

 火の当番を為ているメイドさんが、居間に入っていって、暖炉に火を付けいている。使われている火種は、結構高級な油を使ったランプだ。無いより良い匂いが印象的だ。

 熟々普段の習慣は侮れない。今日のあたしは、いわゆる御嬢様な訳で、侍女に起こされて、起き出して構わない。其れが、マリアの生活だった。

 あたしも育ちが悪いせいか、こうして寝ているのも、しんどく感じてしまう。取りあえず起き出すことにする。寝てれば良いのにとは思うけれど。こっちに生まれてこの方、病気になったとき以外には、こうして寝ていたことが無いから、寝ているだけでもしんどく感じてしまうんだよね。

 それに、いわゆる生理現象も其れなりにはあるから。一応この部屋にも、おまるの類いは用意されているけれど。あんまり使う気にもならないから、この砦の中に用意されている、お手洗いに立ちたいと思う。正直、あたしの排泄物を彼の子達に処理されるのは、少しばかり気が重いから、そっちの方に行きたいと思う。勿論、お手洗いにしたからと言って、最終的に其れを処理するのは、誰かがやるんだけれど。あたしのだって、知られるのは何となく気分の悪いことなんだよね。

 だって嫌じゃ無い。普段なら、そういった事をするのも、あたしの仕事だから、自分でするなら、気にしないんだけど。一寸嫌なもんだよ。この辺りは、昔の感覚が邪魔をしてくれる。

 思い切って起き出すことにする。流石に暖かい布団の寝心地は、良かったんだけれど。

 天蓋付きのベットの脇に、ぶら下げておいた、上着を寝間着の上に、羽織ると、寝室の扉に手を掛けた。真鍮製の取っ手を回して、ゆっくりと扉を開ける。

 暖炉の前に、火を入れているメイドさんの背中が見える。彼女は、一寸かなり背の小さな人で、まるで子供のように見えた。間違いなく子供よね。この邦では、十歳過ぎれば、働くこともあるのだけれど。其れよりも小さい気がする。

 もしかして、リタより若いんじゃ無いだろうか。あの子より若いような気がする。


「お早う。ご苦労様」


 あたしは思わず労いの言葉を発していた。これが良いのか悪いのか、マリアの奴は結構、自分から声を掛けてくるし。最近は、あたしに労いの言葉を抜けてくるから。きっと問題にもならないと思うことにする。

 小さなメイドさんの背が、びくんと跳ね上がった。あたしが起きてきたことに気が付かなかったんだろう。

 ビックリした顔のまま、振り向いた顔は黒髪に縁取られた、ほっぺが少し赤みのある。田舎娘そのものって感じの、可愛らしい子だった。流石に、働くのには、少し早すぎる年齢なんじゃなかろうか。


「お早う御座います。申し訳ありません、起こしてしまいましたか」


 確りした言葉が返ってくる。リタとは偉い違いだ。



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