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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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圧迫面接件食事会 4

 メイドさん達が、其れこそ忙しなく立ち働いている。何だか、申し訳ない気持ちになってしまう。

 あたしは、メイドさんの事情を其れなりに知っているから、少し同情してしまう。だって、この仕事を為ている間は、食事はお預けなんだ。旨そうに、自分の主人が食べているのを、横目で見ながら、給仕を為なければならない。其れも、決して良い給金でもないのにだ。

 あたしは、始めっから底辺の生活を知っている。実際、メイドの生活と狩人の生活を比べれば、相当大きな差がある。良い獲物を狩れたら、其れなりに良い思いも出来るけど。何時も何時も良い獲物を、狩れるとは限らない。父ちゃんは狩人としては、並以上の腕を持っていたけれど。其れも、獲物を狩れるかは運至大なところがあったからね。

 平民が猟をする場所は、結構広いのだけれど。如何したって、獲物の数には限界がある。其れが、貴族が楽しみのために、保護している場所には、かなりの獲物が存在している。何しろ、素人でも狩ることが出来るくらい、獲物の数が多いのだから。

 そういった事情があったから、如何したって密猟を為たくなる気持ちも解るから。あたしは、彼の三人組を許す気にもなったんだ。弓を撃たれたときは、流石にむかついたけれどね。

 メインの肉料理が、あたしの前に置かれた頃。ようやく一段落したのか、メイドさん達の動きが静かになった。

 今この部屋にいるのは、奥様とあたしとデニム子爵と、侍女のシーラ・ロックトンさんの四人だけだ。そのうち、シーラ・ロックトンさんは部屋の隅に、待機の姿勢を取っている。その辺りは、ドリーさんと変わらない。彼女は、デニム子爵から、かなり信用されているのだろう。

 此所での話し合いは、其れほど重要な物でも無いから、聞かれても其れほど困らないだろうけれど。何しろ、あたしが使えるかどうかを判定する物だろうから。


「マリア。随分元気になった様ですね。この前あったときは、彼の事件の前だったでしょうか」


 デニム子爵は、頬を緩めながら、あたしに話しかけてくる。この人は、あたしがなんちゃってマリアを為て居るって事を知っているはずだけれど。その辺りのことを、表情に出さない。此れも試験の一貫なのかも知れないな。

 あたしに向けられている視線は、品定めをしている料理人のように見えた。あたしは、まな板に載せられたお魚ではないんだけれど。本物のマリア、相手にはこんな不躾で嫌な視線を向けないよね。


「ありがとう御座います。彼の事件のお陰で、色々と辛いこともありましたが、最近は元気に運動もしているんですよ」


 内心の気持ちを隠して、嬉しそうに受け答える。勿論此れは事実だ。最近のマリアは、元気にあたしに付いて来るようになっているからね。結構この人は、マリアのことを調べて居るみたいだから、可笑しなことを言って、揚げ足を取られるわけには行かない。

 あたしの事は知っているはずなのに、こうしてマリアとして扱ってくる。知らないって事はないよね。

 此れはマリアの影として、あたしが仕事が出来るかの確認のための、面接だと思っていたのだけれど。こうして、直接対面していると、其れだけでは無いような気がする。

 あたしが、マリアの双子の片割れだって言うことは、この人達には、知られていないはずで。捨てた赤ん坊が、育って自分の前に現れたなんて、知られたら、最悪暗殺されてしまうかも知れない。

 この辺りの言い伝えの中に、双子が産まれたお家は衰退して行き。最期には、家そのものが無くなってしまう。そう言った、根拠のない迷信があって、その迷信を信じた、爺さんがあたしを捨てるように命じたらしいのね。

 未だにそう言う下らない、迷信を信じている人間が居たりするから、一寸気を付けなければならい。そう言った迷信を、このデニム子爵が信じているかも知れないから、マリアのそっくりさんで通さなくちゃいけ無いのよね。

 あたしとしては、取っても面倒で仕方が無いのだけれど。


 




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