河川補修レシピ?
言葉では簡単そうに言っておいたけど、思いの外難しかも知れない。ここには重機も便利魔法も存在しないのである。「さくらいろのきみに・・・」には、魔法的な便利な物は設定されていなかった。時々特異な体質の者が居る程度の物で、スーパーマンみたいな人間は存在していない。
この世界は、現代日本みたいに便利な物がない世界であり。自然となんとか折れ合って生きている人間が住んで居る。
「とにかく奥様は、解ってくれているはずで、貴方も、あたしに協力してくださいませ」
慣れない敬語は、あたしにはすごくストレスになる。結構慣れて居るつもりだったけど、とてもじゃないけど言いにくい。
「リコは新米のメイドなのでしょう。なのに私に命令するの?」
「えっと。あたしはメイドではありません。いわば貴方の影武者です」
何だかいらっとしてきた。あたしは、こんな餓鬼みたいな女の子の相手をしている暇はない。早く、河川から溢れ出してくる水を止めて、ニック達を埋葬する余裕を作り出したのだ。そうしないと、病が蔓延し始まってしまうかも知れない。そうなったら、こんな物では済まなくなるかも知れないのだ。
ここは現代日本とは違って、とても清潔とは言えない場所なのだ。大水で溢れ出した物は、単なる雨水だけではなかった。当然のことだけれども、汚水もかなりの量が村中に溢れ出してしまっているはずで、その上死体を放置していたら、どうなるか解らない。
「なら尚更じゃない」
可愛くない。あたしこんな顔をしているんだ。この世界の貴族ってこんなに可愛くないんだ。大事な事なので、二回言ってみました。
あたしは心の中で、この子は子供なのだと呪文のように呟く。そうでもしなければ遣っていられない。
こいつがあたしの姉妹とは、なんか嫌だ。黙っていれば可愛いのに、口を開けば可愛くない。まだ十二歳のお子ちゃまなのだからなのかも知れないけれど。アリス・ド・デニム伯爵夫人はちゃんと教育しておいて欲しかったかな。
読んでくれてありがとうございます。




