圧迫面接件食事会
二人とも、立ってあたしの事を迎え入れてくれる。此れでも一応マリアって事に成っているから、対等に扱ってくれているのかも知れない。
あたしはこの対応に、少しだけれど不自然なことに気付いた。普段のマリアと奥様の関係から、立ってマリアを迎え入れるようなことはしない。あくまでも、マリアは伯爵令嬢でしか無いのだから、親が立って待っているようなことなんかあり得ないのだから。
もしかして、既に試験が始まっているのかも知れない。なんちゃってマリアとして、認められなければ。此方の目的を通すことが出来なくなってしまう。
彼の家族をナーラダ村に移住させて、安全に生活できるようにする。それ自体は、あたしが作った書類でなんとでも出来る。でも、出来ることなら、あたしが連れて行きたい。何より村の衆に遭いたいって思うんだよね。
この席のホストである、デニム子爵があたしの丁寧なコーツイを眺めながら、微苦笑を浮かべている。何処か、可笑しな所作だっただろうか。頑張って、笑顔を浮かべながら、内心は心配で仕方が無い。
あたしだけのことなら、其れほど心配にも成らないのだけれど。何より、あたしのこの仕草には、かなり大勢の生活がかかっている。あの連中の家族と、あたしが面倒を見ている、リタの生活も、若しかすると影響を受けるかも知れない。
今思い付いたのだけれど。あたしが貰っている御給金は、他のメイド達よりずっと良い。そのお陰で、彼女を預けることが出来ているんだ。其れが、この一回の面接で、ぱあに成ってしまったら。困ってしまうことに成る。
あたしが、リタの面倒を見ながら、仕事を熟すことが出来ない。その事を、あたしは嫌と言うほど、思い知っても居るのよね。所詮、前世の記憶なんて、生活する上で、其れほど役にも立たないもんだから。何しろ、不良為ていて、何にも身につけって居なかったからね。こっちに産まれて、餓鬼の頃から父ちゃんと、賢者様に仕込まれたから、今のあたしが居るのだから。
あたし一人だけなら、どうとでも成るのよね。普通にメイドの仕事を為ていれば、食うに困ったりしない。何しろ、あたしは読み書き計算が出来る、見た目だけの女じゃないから。其れも此れも、すべては賢者様の処で、教えられたからだ。
それでも、あそこに預けるのには、其れなりにお金が掛かる。当然のことだけれど。見習いメイドの給金で、遣っていけるわけもない。
あ、その事に気が付いたら、何だか緊張してきた。少し胃が痛いような気がする。
あたしに付いて来た、シーラ・ロックトンさんがあたしが座る席を引いて、あたしに笑いかけてくる。街論、その笑顔は業務用の物だ。其れくらいは判る。あたしもたまにそう言う笑顔を作る事があるからね。
とは言っても、こう言う所作は流石というしかない。しかし、あたしが逆立ちしても、こういった事は出来ないだろう。




