育ちの悪いお姫様 8
今あたしは着替えの最中である。驚くことに、このドレスは新品だった。
何時あたしのサイズを測ったんだろうか。マリアと概ね身体のサイズは同じだけれど。微妙に胸の大きさとか、腰回りの大きさだって違う。実際マリアの着ていた服を借りて、なんちゃってマリアを為て居たけれど。一寸だけあたしの方が、部分的にあたしの方が大きいのよね。
最近の彼女は、その辺り気にして、あたしと一緒に運動を積極的にしているけれど。流石に簡単にお肉は付かないかったりする。
元々悪役令嬢の身体だから、ナイスバディなのは仕方が無いと思うのね。それに、父ちゃんのお陰で、そこそこ筋肉も付いているしね。
侍女さんが、あたしの前に仁王立ちして、三人のメイドさんに指示を為ている。彼女のお陰で、あたしの暇つぶしは中断されて、この苦痛に満ちたお着替えをする羽目に成った。
「マリア様、いつの間にこんなに筋肉質のお身体に、おなりに成ったのですか」
あたしのこの筋肉質な、身体をしみじみ眺めながら、侍女のシーラ・ロックトンが呟いている。その表情は、少しだけ困り顔だ。どうやら、彼女はマリアとは顔見知りだったらしく。当然の成り行きとして、マリアの体つきについて知っているのだろう。
確かにマリアに、初めて会ったときにはあんまり運動が好きでも無い体付きをしていた。其れが、今のあたしは腹筋が結構硬い。流石に、六つに分かれていたりはしていないけれど。御令嬢の其れではない。
「最近、メイドのリコと運動をしているから、其れで筋肉が付いたのかも知れませんわね。私だって、其れなりには成長しますわ」
あたしは内心、焦りを感じながら、出任せを言ってしまった。どうせ彼女は、本物のマリアと顔を合わせることなんか、そう有ることでも無いだろう。それに、マリアもあたしと一緒に、良く走り込みや弓術の鍛錬に付き合っていたから。まんざら出鱈目でもないしね。
マリア奴は、あたしの方がスタイルが良いから、一寸気にして居るみたいで。良く鍛錬に付いてくるように成っていた。御令嬢が為て良いようなことでは無いのだけれど。何故か、奥様も時々走り込む姿を見かけるから、この邦の常識として、女性も身体を鍛えるのが当たり前なんだろう。
何しろ、此れまであたしの生活の殆どが、父ちゃんとの鍛錬と、賢者様の講義。序でにニックの悪いことを教えて貰うことだけだったから。御屋敷に勤めるように成って、貴族の令嬢を見るのは、マリアだけだった。あれが普通だと思っていたんだよね。
何しろ、此所は異世界だから。あたしの常識は当てはまらないみたいだし。




