表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

942/1219

ナーラダのリコの価値

 リコが決り通りに、退室の挨拶を私達に向けて、この会議室を辞する。こうして見ていると、本当にマリアにそっくりだ。

 呪われた双子なのだから、其れは当然なのだけど。それでも、あの娘には、本当に驚かされる。高い運動能力は、この領地で最も強い男に育てられたのだから、当然としても。読解力と計算力は、アリスですら舌を巻くほど早く。正確な計算に基づく、思考力もとんでもなかった。

 アリスは自分の娘、マリアのことを思う。勿論彼女だって、その年頃の娘としてはかなり優秀だと聞いている。何より、小さい頃より家庭教師を付けて、将来のマルーン邦を支えて行かなければならない運命を、その背に受けなければならない。

 此れは貴族に産まれてしまった人間の、権利で在り義務といえた。其れはマリアにとっては、不幸な生まれなのかも知れない。何しろ彼女は、どちらかと言えば臆病でおとなしめの子供だったから。それが、半年前の誘拐事件で、更に酷くなった。

 誘拐為れたばかりの時は、一人で誰かに会うことを怖がるようになった。其れが、リコが側に居れば、安心して人に会うことが出来るようになった。

 未だに内弁慶なところもあって、リコに対しては結構無茶なことを言ったりしている。

 リコと一緒なら、屋敷の庭を一緒に掛けたり。短弓の練習を始めたりしている。少しずつではあるけれど、誘拐される前に戻ってきていもいた。彼女の屈託の無い笑顔は、アリス・ド・デニム伯爵夫人の心への送りもとなっている。

 あの夫の遣り様を考えるとき、アリスの心はざわめき大きな後悔を呼び覚ます。あの時何故ああ言った決断をしてしまったのだろうか。何故、最も信頼していた盾を手放し、緩やかな屈辱の日々を手に取ってしまったのだろうか。

 彼女の決断は、失敗の連続だった。女としては、失敗だった。政を司る者としては、決して間違いでは無かったと思うのだけれど。

 それっ出も、今の私が幸せかって聞かれると、如何しても口ごもってしまう私が居る。あまりにも、女として、失う物が多すぎた。この邦を守る領主としては、当然のことだ。其れは判っている。

 あの決断が無ければ、この邦の民の今は存在しないのだから。あの時、マルーン王国を襲ってきた、蛮族の軍勢は当時のマルーン王国の持っている、軍事力を遙かに凌駕していた。

 援軍が来なければ、間違いなく王都は攻め滅ぼされてしまっただろう。あの蛮族の遣り様は、徹底的な民族浄化だ。言ってしまえば、男は殺し。女は犯す。蛮族の国に忠誠を誓ったとしても、その未来には絶望しか存在しない。永遠の隷属が待っているのだから。

 叔父様の決断は、よりましな国への恭順により。蛮族達から守られた。彼の国も其れなりに犠牲を出しながらも、蛮族の大軍を押し戻すことに成功する。それから、二年の歳月を掛けて、蛮族との条約を締結することにより。此れまでの平和が保たれたのだ。

 其れが、半年前の誘拐事件依頼。蛮族どもの動きが活発になってきている。未だに、彼らはマルーンの肥沃な土地を諦めきれないでいるのだ。

 本来なら、このような不正を為ている場合では無い。マルーンの民が、一丸にならなければ、此れからどうなるか解らないというのに。

 アリスは心の奥底に、小さな怒りを感じながら、隣で書類を読みふける弟の横顔を覗き込む。本来なら、この男がマルーンを統べる権利を持っている。其れが、宗主国の王との契約だった。

 王が指定する、貴族の子弟と、彼女が結婚して、事実上マルーンを支配する。名義上は、結婚為た他国の男が、領主となる物の、マルーンの民を支配して、納めるのはアリス・ド・デニム王女となる。そうすることで、精強なマルーンの民の暴発を納める。そうしなければ、未だに諦めることの無い、危険な民族の動きを押えることが出来なかった。

 内乱など起こせば、其れを契機に、蛮族達が責めてくることは、火を見るより明らかだったからだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ