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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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困った事に三者面談 8

「失礼します。新しい紅茶にお取り替えいたしましす」


 既に冷え切ってしまった、ティカップのお茶を担当のメイドさんが、取り替えてくれる。いつの間にか、あたしは出された焼き菓子を食べ終えていたらしい。どうやら、書類を読みながら食べてしまっていたようだ。何となく、此れは此れではしたないことだけれど。頭脳労働には、糖分が必要な物なので、勘弁して貰いたい。

 何だか、あたしは申し訳ない気がする。だって、本来なら、あたしも彼女と同じ立場なのだから。

 此所のメイドさんは、結構訓練されている。矢っ張り此所に居るメイド長は、相当確り躾けて居るみたいだ。御屋敷のメイド長サンドラさんは、見た目もその方針も厳しい人だ。しかし、彼女は何処か抜けたところがあって、適当に女の子達が息抜きできる存在だった。

 此所のメイド長は、隙の無い人なのかも知れない。自由人のメイドのリサの顔を思い出して、少し笑ってしまう。間違いなく、彼女は此所でやっていけないだろう。

 そんなことを言っている、あたしもたぶん無理かも知れない。如何したって、不良少女の地金は抜けないもんだ。


「ありがとう」


 ついお礼を言葉にしてしまう。

 メイドに対して、直接話す物ではない。そうしたかったら、侍女に話して伝えて貰う。

 あれ。今気が付いたんだけど。あたしとマリアはため口為ている。それどころか、時には結構えげつない口喧嘩なんかもしている。本人は気にしていないみたいだから、その辺りは良いのかも知れない。そう言えば、あたしと奥様とも、直接話しているけれど、良いのだろうか。

 そうなんだよね。何だかあたしは、他のメイド達と違って、結構優遇されているんだ。その代わり命がけの、なんちゃってマリアを仰せつかっている。だから、他のメイド仲間から、仲間はずれに為れたりしないんだけどね。

 どうやらあたしは、彼女達の中で、侍女とメイドの中間の位置づけに成っている。何しろあたしは、村の出にも関わらず。読み書き計算が出来る。

 メイド達は御屋敷に雇われてから、そう言った教育を受ける。其れが新米メイドにも拘わらず。何の教育も受けないまま、普通に文官並みに出来るから、そ言う物だと思われているみたいだ。

 ただ、良いことばかりでも無い。侍女さんにとっては、結構煙たい存在になっても来ている。

 奥様と、デニム子爵がなにやら、目配せをしていた。あれはよからぬ相談をしているな。その程度の表情を読むことだって、最近のあたしはそう言う事だって其れなりに出来る。

 この技術は、サンドらっさんに口を酸っぱくなるほど言われている。お陰で、あたしのそう言う手人の心理を見抜く能力は向上していると思う。もっとも、此れって若しかすると、悪役令嬢マリアの才能の一つかも知れないけどね。

 兎に角この身体は、本当にハイスペックに出来ている。流石に、父ちゃん並みの力持ちには慣れないだろうけれど。常人離れした、集中力と目の良さはダントツだ。


「リコ。ここらで、お茶会はお開きに為ましょうか」


と、奥様が言ってくれた。気が付けば、窓を照らす光が赤みを帯びてきていた。

 やれやれ、此れであたしの試験は終わったって事かな。残り二つの齟齬の原因を付く止めるように、言われたらどうしようかって思っちゃった。

 流石に、お腹がすいた。この重たいドレスを脱ぎ為てて、軽く運動をしたいなって思った。たぶん無理だろうけれどもね。

 あたしの、なんちゃって業務は、寝るまで続くのだから。



 





 

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