困った事に三者面談 7
一応間違い探しは、此れで終了だろうか。書類の中にある、あからさまな間違いと、それ以外の間違い。其れを見付ければ、あたしの試験は終了に成るかと思ったら、どうやらあたしは厄介な問題を引き当ててしまったらしい。
何がどう言う経緯で、辻褄が合わないのか、あたしに説明しろって、デニム子爵が聞いてくる。
どうやら、書き間違いに計算間違いを見付けることが、出来たら及第点だったらしい。つまり、このおっさんはわざとミスを見逃して、あたしが気付くか確認しようとしていたらしい。それ以外の、二ヶ所は想定外の間違い?。そうじゃ無いな、書き直せば問題にならない物じゃない。木賃と現場にって、調査を為なければ成らない物みたいだった。
デニム子爵は、あたしが指し示しているカ所を、額に縦筋を造りながら、読んでいる。どうやら、この人はこの齟齬に気付かなかったらしい。人足の給金を、木賃と把握していなければ、気付けなかったかも知れない。其れも、上手くカモフラージュするように、言葉の羅列で気付きづらくなるように、上手くお役所言葉で、装飾している。
そう言う意味では、この二つの齟齬は判りにくくするのに、役立っている。この河川の補修工事で、大きなお金が動いた。それに伴い、何らかの利権が生まれたんじゃ無いかな。何処かの誰かが、ほくそ笑んで居ると思う。
此れはあくまでも、あたしの個人的感想で、事実では無いんだけどね。勿論此所で、そんなことは言えるわけが無い。
ま、あたしが言わなくても、よく調べれば自ずと判ることだから、この意地悪叔父さんに、頑張って貰おうと思う。
何しろ、あたし達がこの砦にいられる日数はそんなに長くない。せいぜい三日くらいだ。其れも、貴族らしい晩餐会が予定されている。其れって、結構時間を取られる行事だと思うしね。
何せ、女の準備は取っても時間が掛かる物らしいから。その事業に関わる書類を、精査するだけの時間的余裕なんか有るわけが無い。
正直、あたしはそんな面倒い仕事なんか御免だ。一応、今回の視察に付き合っているから、其れだけで、あたしが望んだことは概ね叶えられることに成るから。
何より、あたしは正義の味方でもないし。言ってみれば、悪役令嬢……元不良の転生者でしか無いんだから。
「言われてみれば、確かに辻褄が合っていないかも知れない。君は良くそれに気付いたもんだ。私の所の文官でも、この巧妙な言い回しに気付かなかった」
と、デニム子爵が呆れたように言葉を掛けてくる。この人は、自分でこの書類を読まなかったのだろうか。
あたしの方こそ呆れてしまう。流石に、筆算を為ていたんでは気付けないかも知れない。時間を掛けなければ、この官僚言葉の裏にある意味なんか解んないだろう。
あたしの指摘に、奥様も其処の処をよく読んでいる。真逆あたしなんかに、こういうことを指摘されるとは、思っていなかったのかも知れない。
奥様は普段から、そう言った書類に精査をする人で、不断から努力の人だって事は知っているけれど。数字に関しては、あたしの方が速くて正確な計算が出来る。其れと、なんと言っても、村長の処で、色々な不正をしてくる、悪徳役人の、文章に慣れきっているからね。




