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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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困った事に三者面談 6

「三ヶ所の齟齬があった。其れは計算間違いと、書き込みには違いがあったのだろう。早速、担当している者に、修正させよう」

と、デニム子爵が言った.。

 あたしの聞き間違いだろうか。

 あたしが指摘したのは五ヶ所だけど。確かに三ヶ所は、明らかに計算間違いか書き間違いだと思う。この間違いは、簡単に気付く物だ。いわばダブルチェックで減らせる間違いだ。実際人間だもの、そう言ったミスはつきものだと思う。

 他の残り二つは、ざっと見ただけでは判らないだろう。あたしは、こういった事が得意な人では無いけれど。何となく作為的な間違いを感じるんだ。

 デニム子爵は、苦虫をかみ殺しているような顔で、あたしが指し示している数字を眺める。この三つの間違いは、案外この人は気付いていたみたいだなと思った。この作業は、奥様が父ちゃんを模擬戦させたことと一緒で、此れはいわゆる試験の類いだったのかも知れない。それなら、尚更木賃と指摘しておかないと、後で何言われるか判らないかも知れないしね。

「いえ……間違いは三ヶ所では無く、五ヶ所です。恐らく単純な書き間違いと、計算間違いの他に、もう少し精査してみないとなんともいえない齟齬が二ヶ所有りました。こう言った間違いは、村に居たときも結構在った。何せ、文字の読み書き計算が出来るのが、彼の村では絶対的に少なかったから、如何しても、間違いに気付かずそのまま、御領主様の所へ行ってしまうことがある。そう言った類いの間違いが、三ヶ所になると思う。それ以外の二ヶ所は、何処か違和感がある。だからと言って、この書類だけでは、何がどうなっているのか判らない」

「其処まで判る物なのか」

 デニム子爵は驚きを隠せないようで、あたしの顔をまじまじと見詰めてくる。あたしはまずったかなって、内心臍をかむ思いで、こうなったら仕方が無いから、一番違和感のあった数字と、事業内容の説明文を指さした。

 別にあたしは、チート能力を持っているわけでも無くて、村で村長の処で、事務仕事を請け負っていた関係上。こういう事に慣れている。前世ではただの不良少女だったから、こういった事が得意って訳でも無いから。少しだけ、暗算が出来る程度なんだけど。それでも、この邦の事業に関わる、人足の賃金や、工期にまつわる常識は知っているから、何とか指摘することが出来る。

 この間違った書類のまま、領主様に見せたら、此所の責任者の顔に泥を塗ることになるかも知れないから。

 奥様が此所に居るや。今更かな。

「一つ聞いて宜しいですか」

 奥様の手が止まっている。御免なさい、折角休憩に為ようって言って貰えたのに。此れでは休憩になら無いかも知れない。

 デニム子爵は、何とも気に入らなそうにあたしに頷いてくれる。

「申し訳ありませんが、この書類の間違いについて、何処まで把握しておられてますか。そして、この書類の間違いはあたしを試すために、わざと残しておいたのでしょうか。それなら、何の問題も無いのでしょうけれど。今、貴方は三ヶ所を言われましたね。その間違いは、デニム様の把握していた内容でしょうか」

「確かに、三ヶ所は既に私の方で、把握して、担当者に間違いを指摘している。直された、書類はアリス・ド・デニム伯爵夫人に、今確認して貰っている物がそうだ。」

 デニム子爵はそう答えてくれた。素直な人で良かった。偉いさんは、自分のメンツを大事にするから、あたしみたいな小娘に指摘されることを嫌うからな。

 でも、申し訳ない。此れからもっと、しんどい確認が必要になることを指摘する。青ざめることに成るかも知れないね。

「川の補修工事に関する、若しかすると不正を見付けてしまったかも知れません。宜しければ、その二ヶ所に関する資料を見せていただけないでしょうか」

 思わず、村で遣っていたことを思いだしてしまった。此れって、しんどい作業なんで、本当はやりたくないんだけど。此れも試験の一貫かも知れないから、知らない振りも出来ないかな。







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