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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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困った事に三者面談

 デニム家の御屋敷とは、趣の違う砦の通路を、あたしと子爵家に勤めている執事と歩いている。本来なら、一緒に来ている侍女のジェシカ・ハウスマンさんも一緒に居なければならないのだけれど。何か用事があるらしく、この寡黙な執事に案内を為れているって訳だ。

 あの人も其れなりに忙しいしね。それになんちゃってマリアであるあたしに取っても、其れなりに気楽でいいんだけどね。此所の執事は、本来のマリアのことをそんなに知らないだろうから。一生懸命演技しないでも、問題にならないだろうから、気楽にいられる。悪役令嬢マリアは、良くあんなにしんどいなりきり演技が出来たと思うよ。

「では、マリア様此方で、お二人ともお待ちいたしております」

 執事さんが、軽くノックをすると、扉が内側に開いて、お仕着せのメイド服を着た、侍女さんが顔を出す。

「マリア様をお連れいたしました」

「ご苦労様です。マリア様お待ちいたしておりました。直ぐにお茶をお持ちいたします」

 侍女さんは、そう言って軽くコーツイをしながら、後ろに下がる。彼女が何故メイドでは無いか判るかというと。この砦の侍女さん達は、懐剣を隠しているからだ。

 メイドと侍女の違いについてだけれど、侍女は貴族の子女が行儀見習いのために勤めている。そして、メイドと呼ばれる者達は、平民での者が貴族の御屋敷に、雇われていて居る。

 そのせいか、侍女の中には懐剣を偲ばせている者も居る。そして、彼女達が居るこの場所は、主に戦争の際に、戦うこともあると覚悟を決めている人達だ。メイドに、雇い主も其処までは期待していない。何故なら、あくまでも主の日々の生活に必要な、雑用をこなす存在として、考えられている。

 だから、あたしはなんちゃってメイドなんだ。あたしの身分は、あくまでも騎士の位を投げ捨てた、父ちゃんの娘だから。いわゆる平民での小娘にしか過ぎない。一寸変わっていることは、マリアのそっくりさんだってだけだ。

 でもさ。良く悪役令嬢マリアの奴は、マリアに成りきれていた者だと思う。あたしなんか、このなりきり演技で、とんでもなく疲れちゃうのに。

 因みにあたしの今の格好は、マリアの普段使っているドレスとは違う。あたしが着るために、奥様が注文してくれた物らしい。何より有難いのは、ドレスに他からは疵から無いように、細工を施されたポケットが幾つか、付けられている。

 勿論、懐剣なんか持っては居ない。偲ばせているのは、簡単な解錠の道具と、小さな鎖を入れてある。流石に、普段使いの鎖は目立つしね。

 かく言うこのあたしも、其れなりには強いから。懐剣を偲ばせていてもいいんだけど、其れだと侍女さんみたいじゃない。

 其れと、ドリーさんなんかも懐剣を持っていたけれど。あの人は何処に隠していたのか、あたしには気付くことも出来なかった。

 型通りのコーツイを一つ為て、視線を上げると、奥様とデニム子爵がテーブルに座って、あたしの所作を眺めていた。

 奥様は、何かほほえましい物を見ているような微笑みを浮かべて、それに対して、デニム子爵は何か苦い物でも食べたんじゃ無いかって顔を為ている。

 

 





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