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変わり果てた故郷 9

 崩壊し歌堤防はまだ酷い状況だった。高く盛り土して、方形に整形した石材は、流されて其処いら中にぶちまけられている。そして、未だに水位が高いのか、そこから新たな川のように流れ出てくる。このままでは、まだしばらくは水が引いてはくれないだろう。

「正直、水位が元に戻らないと堤防の補修工事なんて出来ないと思う。村の男衆を駆出す事は出来るけど、皆呆然としてしまって何をどうして良いか解らない状態だよ。ここに送り込まれてきた兵士は使うことは可能だろうけれど、他の村の処へ向かわせなければ行けないこともあって、そんなに補修工事に投入することは出来ないだろうね」

 と、ジャスミン・ダーリンさんが言った。その顔には、あまり寝ていないことを表す隈ができている。恐らく嵐の夜から、少数の兵士とともに、行方知れずに成った者達を探すので精一杯だったのだろう。未だに捜索は継続中だ。

 今ここには、領都からやって来た第二次救援部隊の皆がいる。それ以外には、村長さん初め村の男衆が全員いる。手には頼んでおいたスコップがある。とりあえず土嚢で、流れ出す水を止めたい。そうすれば、少しは早く水が引いてくれるだろう。

 あたしが知っていることは、テレビで見ていただけの簡単な事だけれど、有効だと思う。一日でも早く、水が引いてくれればいろんな事が出来る。急げば麦の収穫に間に合うかも知れない。もしかしたら、行方不明になっている人を見つけることが楽になるかも知れない。いつまでも水が引かなければ、間違いなく畑がだめになる。

「麻袋に土を詰め込んで、並べれば水を止めることが出来ます。遣ってみてください。水位が下がるのを待っては居られないでしょう」

「ちょっとリコちゃん。あんた、領主様のところでメイドになったのかい」

 オッちゃんがあたしに声を掛けてきた。その手には麻袋とスコップを持っている。その表情は怪訝そうな顔をしている。

「今は試用期間なんだ。でも、こんな事になってしまったから、この村のことを知っているあたしが来させられたんだ。急いで、水を止めないといけないから、あたしの言うことを利いてね。お願い」

 あたしは皆に聞こえるように、大声を出した。餓鬼だったあたしの言うことを聴いてくれるかは解らないけれど、遣って貰わなければもっと酷いことに成る。なんとしても動いて貰わないといけない。

 本当なら、こんな事はマリア・ド・デニム伯爵令嬢の仕事だと思うのだけれど。あの子は全く動く気配がなかった。十二歳の子供には無理な話なのかも知れないけれど、少しは動いても罰は当たらないと思う。


 


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