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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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子爵の目論見

 ディーン・デニム子爵は、冷たい視線を、マリア・ド・デニム伯爵令嬢と名乗った娘に対して、注ぎ続けていた。其れは、初めて会う人間に対しての、観察の視線だ。

 夢中になって、目の前で展開していく。彼が知りうる限り、何でも出来る器用な大男と、彼が雇っている兵との模擬戦は、予想通りの展開を見せている。この砦で、最も強いベテラン兵士を打ち負かした時点で、その出鱈目な強さは証明されており。この辺で模擬戦は、遣る意味の無いことになっていた。

 最もこの模擬戦に関しては、あくまでも新兵の訓練の一貫でも在り。全く意味の無い訳でも無い。少なくとも、あの男が小隊長を勤めていることに、意義を上げる者は居なくなるだろう。何より、ハーケンが味方で居折る限り。万が一にも、戦闘になったときには、安心材料になるのだから。

 デニム子爵は、この影武者と言うには少しばかり演技の下手な、娘の表情に注視しながら、模擬戦の進捗に心を砕く。ハーケンが護衛騎士を放り出してから、初めて、顔を見たのだが。随分表情が柔和になっていた。そして、身体は更にでかくなっていることに気付いた。

 御者の格好を為ていたが、その体格から変わらず鍛錬は行っていることを察することが出来た。それでも、昔の強さは期待できないだろうと思う。

 どうやら、奥様は視察の旅に連れ出して、その実力を証明して歩いていたようだけれど。彼の気持ち的には、その噂を信じることが出来ないでいた。それどころか、他の隊の連中後から不足で、ハーケンが衰えていることに、気付くことが出来ないのでは無いかと思っていた。

 今回の姫の決断にも、彼としては意義を上げたい。その為の模擬戦と言うなの、催しだった。ハーケンが何処かで、馬脚を現してくれれば、此方としては姫を説得する材料になる。

 もしも、ハーケンの実力が昔のままなら、小隊長を遣らせておいて。孰れ元の立場に戻って貰うことも出来る。この間、姪が誘拐されるような、為体を曝さないように、鍛えさせる良い機会かも知れない。そう、彼は考えていた。

 また一人、槍兵がハーケンの矢の餌食になった。それでも、新兵の数は、四人も残っている。盾と槍を持った兵は未だ健在で、確かあの隊の中でも一番腕の立つ者だ。

 互いの距離は、槍の間合いではなかったけれど。既に矢を番えている暇は、ハーケンに残されていない。何より、槍の間合いと剣ならば、当然槍の方が断然有利だ。

 何より新兵とは言え、彼が鍛えた兵士達は実戦経験がある。つまり、敵を殺したことがある連中なのだから。囲みさえすれば、ハーケンが化け物だと言っても、そう簡単には負けたりはしないだろう。

 デニム子爵がそう考えながら、更に戦況に注視しようとしたとき、女の指が彼の肩に触れた。アリス・ド・デニム伯爵夫人の指である。

 此れまで、あの模擬戦に見入っていた姉の何時になく緩んだ顔が、彼に向けられている。彼女の顔から、この模擬戦が何の波乱もなく終了すると、確信していることが判る。

 この模擬戦は、ハーケンの無双で終わる。後は、新兵が怪我をしないことを願うだけだと言うことに。



 

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