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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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変わり果てた故郷 7

 教会に礼拝堂は静かで、腐敗臭が蔓延してきている。いい加減、埋葬しなければならないだろう。今は夏の暑さが、遺体を腐敗させてくる。蝿が止まり出すのも時間の問題だろう。埋葬は急いでやらなければいけないけれど、今のあたしには会えるだけでも良かったのかも知れない。前世の頃には、腐敗しないためにドライアイスを使ったりして、遺体が痛まないように、遺族が少しでも心を痛めないように工夫していた。

 でも、今は非常時である。其処までの余裕は皆にはない。未だに決壊した堤防からは、水が溢れ出してきている。補修作業は進んでいないのだ。

 現代日本の土木技術は望むべくもなかった。ここには重機もなければ、復仇するためのノウハウは有るけれど、すべてが手作業でやるしかない。しかも、其れをするのはそういった訓練を行っている者ではない。お寒い現実がここにはあった。

 あたしはすべてのシーツをめくり、全員の顔を確認した。勿論知っている顔ばかりである。ナーラダ村の人口は百八十一人。これくらいだと、すべての人と親しい関係に成っている。心臓のあたりが何かに締め上げれらる様に痛む。頭の中がぐちゃぐちゃに成ってしまって。情けないけど、久しぶりに声を出して泣いた。

 ニックの死に顔は怖かった。他の皆の顔も怖い。

 皆死にたくはなかったのが、あたしにも解った。きっと前世の時にあたしもきっと怖い顔をしていたのかも知れない。家族全員に謝りたくても、今のあたしにはどうすることも出来ない。

 しばらく泣くと、気持ちが軽くなってくる。不思議なことに、あたしの胸を締め付けていた物が、此れから遣らなければいけない事が、幾つも浮かんでくる。まずはここにずっと置いておくわけにはいかない。なつのあついなかでは、あっという間に腐敗してくる。其れでなくとも、水害の後には、病が蔓延するはずで。もっともっと被害者が増える。

 ゲームでは語られてはいなかったけれど、こんな事で知っている人を亡くすのは嫌だ。勿論こういった災害は、誰にも予測の出来ることでは無いけれど。でも、なるべく人災と言えることはなくしていきたい。出ないと辛すぎる。

 あたしにも出来ることがあるはずで。こうして、ニックの亡骸にすがって泣いていることは、何の役にも立たないことなのは解る。今は泣くことより手を動かす方が良い。これ以上犠牲者を出さないために。

読んでくれてありがとうございます。

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