変わり果てた故郷 3
村長は徐に片膝をついて、貴族に対する最上級の令を、マリア・ド・デニム伯爵令嬢に対して行った。平民と貴族の差は明らかに大きい。其れが大人と子供だとしても、多くの人間の視線があるところにおいては、決まり事は行われなければならない。権力とはそう言う物なのだろう。
「マリア・ド・デニムですわ。初めまして。よろしくお願いしますわ」
子供らしくあまり上手くはないが、カーツィを行う。伯爵夫人のカーツィと比べると、酷く可愛らしく感じられる。子供だしね。自分のことは棚の上。
「このような時にお嬢様自ら、このようなところまでいらっしゃれるのは領民一同心よりお礼させていただきます」
「いえ。私も皆様の無事を心より祈っておりました」
「はい。ありがとうございます。残念ながら、三人が行方知れずに成っております。亡くなっているのは五人でございます」
村長は残念そうに言った。
「あの夜の氾濫によって、家が流された時にその家に居た者が、崩壊する家につぶされて、おぼれてしまったのです」
その言葉にあたしの背中から、寒気がはい上がってくる。地に見にこの村の住人は、すべて知り合いで、付き合いの濃淡はあるけれど、全員の顔と名前は一致している。誰が亡くなったのか、早く知りたくて仕方が無い。
こんな時に真っ先に顔を出すニックが顔を見せないのが気がかりであり。そして、運河の側に住んでいた賢者様のことが心配になる。
あたしは耳をダンボにして、村長の言葉を聞き入っていると。ニックの名前と、彼の相手をしていた未亡人の名前が入っていた。昨日二人の死体は上がったそうである。
金が入ったニックは、その足で村一番の美人と評判の、未亡人の所へ遊びに行ったのだろう。其処で、間抜けにも水害に巻き込まれてしまった。
そして、賢者様はいまだに行方知れずになっていた。他には、村はずれに住んで居た、家族全員がおぼれて、死んでいるそうだ。あたしは泣きたくなった。とは言っても、ここでは泣くわけにも行かない。後で泣くために、歯を食いしばる。
水車小屋は、完全に流されてしまい。あたしが思ったとおりに石窯小屋も使い物にならなくなってしまっている。
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