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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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変わり果てた故郷

 第二次救援部隊は、その日の夕方にナーラダ村に到着した。紅に染まった雲の元、村の全景を見た。あたりは酷い有様になっていた。 本当なら小麦の刈り入れが始まっているはずなのに、まだ水浸しになっている。

 決壊した運河から、下流に建っていた家のほとんどが、流されてしまっている。流石に全滅しては居なかったが、村に住んでいる者の家の三分の一がほぼ使い物にならなくなっている。流されていなくても、水没してしまっては住む事が出来ないだろう。ちなみにあたしの家は流されてしまっていた。

 未だに運河の堤防は、修復作業にすら入れないで居る。つまり、村の下の方は沼の様になっている。せめてていぼうを修理しなければ、ここから下流にある村も酷い事に成っているだろう。ここに居たのでは、どれくらいの被害になっているか想像が出来ない。

 村長の屋敷は無事だった。第一次救援隊の馬車は、村長の屋敷の庭に五台置かれている。あそこは、比較的高い位置に立っていたので、最も安全な場所なのだろう。

 村長の屋敷の周りには、簡易な天幕が張られており。所々で、焚火が焚かれている。向かっていたはずの馬は見かける事が出来ない。もしかすると、どこかに出かけているのだろう。

 馬車と荷馬車の混成集団は、水害によってぐちゃぐちゃになった道を、ゆっくりと進んでゆく。ここに到着する間に、荷馬車の不具合で動きがとれなくなったこと二回。そのたびに兵士さん達が、とんでもなく苦労しながら進んできた。

 村の中に第二次救援隊が、村の中に入ると、村の衆が顔を出してくる。あたしは村の衆が無事なのか顔を見たくて、馬車の窓から覗こうとすると。窓側に座っている護衛兵さんが邪魔をする。窓から顔を出すなというのである。馬車の窓ならそんなに危険じゃないのにな。

 村にはあたしより小さい子も、それどころか赤ん坊もいる。そして流された家に住んでいた人の安否が気がかりなだけなのにな。少しでも早く、皆の元気な顔が見たい。誰も掛けることなくいると良いのだけれど。

 あたしには何も出来ないけれど、其れだって気になることなのだ。本当は、その時にあたしも居られたら良かったのだけれど。此ればかりはどうしようもない。

 ニックや賢者様は無事だろうか。アガサおばちゃんの家族はどうなのか。この人達の家は、あたしの家より低いところにあったので、流されてしまっているはずなのだ。逃げられたのか心配で仕方が無い。

 出てきた人たちの中に、賢者様の姿とニックの姿が見えないことに、あたしの心臓が締め付けられるような気がした。賢者様の家は、運河の側に立っていた。ニックは、あの夜に村はずれの未亡人の家に行っていた可能性が高い。お金が入れば、必ず遊びに行っていたはず。其処で、水に巻き込まれるはずなのである。あの未亡人の家も、かなり下流野村外れの家があった、その家は村の外から見る限り、水に流されてしまっていた。




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