朝食は固いパンと干し肉のスープは定番 4
朝食の時間は、あたしにとっては其れなりに楽しい物になった。村娘でしかないあたしにとっては、この程度の食事でも悪くなかった。贅沢を言わせて貰えば、野菜を使ったものだったら良いと思う。あんまりこんな食事ばかりだと、身体に悪い。前世と比べてはいけないけれど、もう少しバランスの良い物にした方が良いと思う。
メイドさんが用意したテーブルセットに、あたしとマリア・ド・デニム伯爵令嬢が腰を下ろしている。何であたしがこうしているかと言うと。メイドのドリーさんに命じられたからである。ちなみに、あたしの側にはメイドのロージーさんが付いている。彼女は、髪は黒で瞳も黒の懐かしい感じの女の子である。歳はまだ十七歳だと言っていた。
彼女は、あたしにとっては話しやすい感じの子だった。他のメイドさんは皆大人だったので、あたしの隣で嫌そうにしながら、干し肉のスープに固いパンを浸している、マリア・ド・デニム伯爵令嬢も、ロージーさんに対しての表情が緩んでいることがある。
ここでは、お上品な食事なんか出来ない。実際旅に出たなら、貴族だって、此れより粗食に耐えなければならないのだ。あたしはちゃんと座って食べる事が出来るだけ、全然ましたと思う。だって側にメイドさんが、居て面倒見てくれんだから、良いと思う。
あたしもそんなことを考えながら、深皿のスープに固いパンを毟りながら、干し肉のスープに浸して、ふやけさせると口に入れる。口に入れると、肉のうまみと塩気が広がる。あたしが作るスープと比べると、決して旨い物ではない。腹がふくれれば、上等という物なで、文句など言えるわけもない。前世だったら、絶対文句を言ったと思うけれど。
「ねえ。何かもう少し美味しく出来ないの」
「お嬢様、其れは」
メイドのロージーさんが、困り顔をして応えた。
あたしは思わず、伯爵令嬢の顔を見詰めてしまった。伯爵夫人ですら、昨日の夜にもっと不味そうな物を手束みで食べていたのを覚えている。しかも食事している時の美味しそうな顔が、印象に残っている。しかも、彼女の服は鼠の返り血で赤く染まっていた。
意外にこの伯爵夫人は怖い人なのだ。血まみれでも、気にしないで食事が出来るって、普通の神経では出来ないよ。
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