朝食は固いパンと干し肉のスープは定番
早くも朝食の準備が始まっている。早くも今朝の食事の準備が進んでいる。馬車の窓にはカーテンが下ろされており。外の様子を覗うことは出来ないが、会話の声やスープの良い香りが、あたしのお腹の虫を活発にしてくれる。どんなに心配していても、空腹は否が応でもやってくる。
メイドさん達と若い兵士さんとの楽しそうな遣り取りは、あたしの頬を綻ばせることに成功していた。半分冗談みたいに、兵士さんが口説いているが、朝の光の中では全く効果が無い。ご愁傷様と言いたい。
「貴方はメイド服に着替えなさいね。そんな格好で外には出られませんよ」
ドリーさんは、両腕を腰に当ててきっぱりと言った。外で、朝食の準備をしながらふざけているメイドさん達が、こってりと絞られるだろう。この人は、あのメイドさん達のまとめ役になって居るみたいだし、彼女達を叱るんだろうなと思う。
「其れと、お嬢様もそろそろお起きに成って頂けませんか。今日来て頂くためのワンピースをご用意させますので、ご準備をお願いいたします」
「あ、おはよう」
マリア・ド・デニム伯爵令嬢が、椅子の上で未だに、目を開けること無く返事をする。さっきのあたしの挨拶と全く同じ事を言った。まだ目が覚めていないのだろう。
ドリーさんは、彼女の雑な挨拶に対してはスルーした。ずいぶん態度が違う。あたしは、何だかモヤモヤしてくる。主人と使用人との関係のせいか。一貫していない気はするけれども、其れも仕方の無い事なのかも知れないけど、面白くない。
「リコ。昨夜は眠れなかったみたいだけど、大丈夫」
彼女は、少し腫れた顔で、あたしに潤んだ視線を向けてくる。伯爵令嬢も、あまり眠れなかったのかも知れない。まだ起き出す気配は微塵も感じられない。
マリア・ド・デニム伯爵令嬢が寝ているベットとは比べる事も出来ないほど、馬車の椅子の上は寝心地の良くない物だろうし。こんな場所で、野宿するのも初めてだろう。貴族のお嬢さんにとって、それだけでも大冒険なのだろうな。良く家に帰りたいなんて、我が儘言わないもんだな。ちょっと、あたしは見直してみた。
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