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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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ナーラダ村へ 5

 ようやくちゃんとした休憩になった。林を抜けて、見通しの良いところまで第二救援隊は進んだので、部隊はゆっくり足を止めた。既に日が暮れて、だいぶ時間が経っている。月は雲に隠れてしまっており。この時代の暗さは、現代人が考える暗さとは訳が違う。カンテラの明かりがなければ、自分の手元ですら見えない。前世の街は相当明るかった。

 あたしの隣に座っていた、護衛兵さんが両開きの扉を開き、真っ先におりた。気がつくと御者台に居た兵士さんが、カンテラで馬車の扉の足下を照らしてくれている。勿論此れは、あたしのためでは無い事は解っている。マリア・ド・デニム伯爵令嬢やメイドのドリーさんのためなのは、明らかである。何しろ、この馬車は台でも使わなければ、乗り降りに難儀する高さが合った。だから、兵士さんが降りようとしているあたしに、手で待ての合図をしている。

 あたしが、飛び降りようとしていたからだけれど、これくらいの高さは、大した事ではないのだけど。まるであたしに対しても、淑女に対するような対応をずっとしてくれていた。護衛兵さんと、目が合った。彼ははっとしたような顔をする。あたしの目が、光を強く反射している事に気が付いたのかも知れない。

 カンテラを持っている人とは別の御者台に乗っていた兵士さんが、踏み台を持って降りてきた。その踏み台を、徐に置く。いつもの事ではあるけれど、強面の兵士には、似合わない護衛兵さんは全員の手を取ってエスコートする。男性に対しても変わらないのだ。彼にとっては、この馬車に乗っている人間は、すべて護衛対象らしい。前の休憩時間に聞いたのだ。

 あたしは、護衛兵さんの手に手を合わせて、照れくさい気持ちになりながら、踏み台に足を下ろす。流石に無骨で大きな手は、あたしを危なげなく支えてくれる。先ほどの驚きは、彼の顔から消え。にっこりとした笑みに切り替わった。

 ちなみにもう一人の護衛兵さんは、馬車から降りようとする皆を背にして、周りに視線を向けている。そっと、片手が剣の束に掛けられている。

 この人達は、こういった動きがルーティンになって居るみたい。どんなときでも、その動きを変わる事無く行っている。後で父ちゃんに聞いてみようかと思う。どうも無意識で動いている感じがするのよね。


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