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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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余計なお世話 5

ブックマークありがとう。

「宜しくてよ。とりあえず座って話しましょう」

 デニム伯爵夫人は、手を止めて、少し嬉しそうに微笑んで、あたしに椅子に座るように促してくれる。その仕草は、貴族夫人らしく嫋やかで、麗しい物であった。修羅場にいたときの彼女が纏っていた、雄々しさは微塵も感じられない。出来る女という表現がしっくりするかな。

 彼女は壁際で待機していたメイドさんに、お茶を入れるように指示すると、皆にしばしの休憩を宣言する。部屋の中の張り詰めたような雰囲気が、途端に緩い物に変わる。

 マリア・ド・デニム伯爵令嬢が、顔を上げてあたしをにらむ。未だにあたしのことをドッペルゲンガーだと思っているのかも知れない。其れは、あながち間違っては居ないのかも知れないけど。ゲームのオープニングシーンでは、ナーラダのリコは彼女の顔を見た瞬間に、射殺しているのだから。

 でも、いい加減にして欲しい。あたしは、殺しては居ないし。それどころか、命の恩人だったりするのだから、

お礼の一つぐらいあっても良いよね。ここ大事。

 メイドさんが紅茶を入れ始めると、紅茶の良い香りがこの部屋を満たす。全員分を入れるように言っていたので、まだ時間は掛るだろう。とりあえず不作法かも知れないけれど、お茶が入れられる前に口を開くことにする。なるべく早く決断した方が、良い結果になると思うから。

「早速ですが、村に持っていく荷物について、提案させてください」

 メイドさんの表情が、少し歪むのが見えた。それと、マリア・ド・デニム伯爵令嬢の表情が、堅い物になる。

 あたしは何か言われるかなと持ったけど、伯爵夫人は黙って聞く体制を取っていたので、話し続けることにする。つくづくゲームのイメージから遠い人柄に見える。平民の子供の言葉を、この状況で聴いてくれようとするだけで、尊敬に値する気がする。

 あたしの知る限りでは、賢者様以外でちゃんと話を聞いてくれた人を知らない。何しろあたしは、平民の学のない子供にしか過ぎないのだから。

「小麦を用意しているようですが、たぶん現地に行って、あまり使えないかも知れません。だから、芋や人参や玉葱のように、鍋で調理して食べることが出来る物を多く持って行った方が良い。そして、もう少し多くした方が良いです」

 なるべく簡潔に言おうとして、どう言ったら判って貰えるか、考えながら言った。あたしの頭の悪さに、本当に情けない。もう少し簡潔に言わなければ、理解してはくれないだろう。どう説明したら、この人を説得できるのか、見当も付かない。


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