余計なお世話 4
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扉が内側に開かれて、がたいの大きな兵士さんが、後ろに身を引くと、此方を見ている栗色の瞳と、目が合った。アリス・ド・デニム伯爵夫人の瞳である。彼女は、大きなテーブルの向こう側で、書類の山に埋もれるようにして、何か決済をしていたようである。目元には確りと隈が浮き出ている。この人もオールだったみたい。
あたしが一度も、泊まったことのないような豪勢な部屋は、とにかく広かったが、この部屋に居る人間の数も多く、手狭に感じられる。
大きなテーブルの向こう側の中央には、伯爵夫人がテーブルの上にある書類の山に、囲まれている。 此れから救援隊とむかう予定のむかうマリア・ド・デニム伯爵令嬢がべったりと張り付いている。右隣には、中年の文官らしき男が座っている。壁際には、中年のメイド服を着た女性が、小さなテーブルの上に、ティセットとともに立っている。そして、あたしをむかい入れた、体格の良い兵士が一人。
窓はカーテンが下げられて、外は見えなくなっている。それでも、高価なガラスを使われているので、室内は明るい。少し窓は開けられているのか、風が室内に入ってきているので、それほど居心地は悪くはなかった。
あたしは、賢者様に教えて貰ったことを、必死に思い出しながら、使用人が話をするために取る態度を取って、伯爵夫人の顔を眺めた。確か、平民の方から声を掛けるのは不敬になるとかなんとか言っていたはず。少しばからしい気がするが、とりあえず決まり事は守ることにする。
「何か用事がありますか?」
読んでいた書類から顔を上げて、デニム伯爵夫人が声を掛けてくれるのに、三分は掛った。あたしは少しいらっとする。
「村に持っていく荷物を見て、具申したいと思いまして」
あたしは、貴族との会話に必要なことを、必死にない頭を絞って、語り出した。何はともあれ、此方の言うことを着て貰わなければ、村の衆が困ることになるかも知れないのである。子供の言うことだからと言って無視されるわけには行かない。
村の石窯小屋が流されていたら、小麦はあまり役には立たない。せめて鍋で調理して食べることが出来る物を、持って行って欲しかった。でないと村の衆が飢えることになる。小麦があっても、石窯小屋がなければ、どうする事も出来ないのだから。




