余計なお世話 3
ブックマークありがとうございます。少しでも楽しんで貰えるように致しますね。
デニム伯爵夫人は、領都で最も大きな規模を誇る、貴婦人亭を丸ごと借り受けて、今回の事態に対処するための指令所としていた。お屋敷にいては、緊急の決断が遅くなると判断したと、父ちゃんが言っていたことを、あたしは思い出した。
ランプ亭とは違い、窓にガラスが入っている店構えの、高そうな宿の前には、デニム伯爵家の紋章を掲げた、二頭立ての馬車が3台止められている。その側には、下働きの兄ちゃんが、飼葉を準備している。そろそろ出発する予定なのだ。
あまり時間的に余裕はない。あたしは、このままだと、現場に着いたところで、全く役に立たなくて困ることになるような気がする。
村に着いてから、色々困ったことになるかも知れない。実際的な援助にならないばかりか、復興の妨げになるかも知れないのである。
宿の中には、今回派遣される予定の兵士達が、食堂にこもって、なにやら話し合っていた。漏れ聞こえてくる話し声からは、あまり現地の状況は知らされていないみたい。報告を上げるにしても、早馬を使っても丸一日は掛かるのだから、報告を上げられてからでは行政が動くのに、どれほどの時間が掛かるか判らない。これだけ早く靴段が出来るだけ、ここの領主様はたいした人物と言えるのかも知れない。
あたしは、あの怖い奥様を見直した。ゲームのオープニングシーンのイメージが強すぎて、少し見くびっていたことを謝らなければいけないかな。
領主様達が泊まっている部屋は、二階の南側の一番良い部屋である。この街にやって来た裕福な商人がよく使う部屋だ。真面な貴族なら、この街に方なら、デニム家のお屋敷に泊まらせて貰えるはずで、まず泊まったりはしない。
あたしは、装飾の施された木製の扉の前で、護衛をしている若い兵士に、具申のむねを伝えた。腰に下げている剣が嫌な感じである。今回使われた気配はないので、成ったばかりの新兵なのかも知れない。父ちゃんに言わせれば、一番危険な奴らしい。抜きたがりなのだ。
経験のある物は、鼠退治か未だにくすぶっている、火事の消火に当たっている。今暗殺者が残っていたら、大変なことになるのではないだろうか。
護衛君が、あたしの話を聞いて、木の扉を三回ノックする。あたしの名前を挙げて、面会の許可を取ってくれる。その間、あたしの顔をしげしげと見詰めている。少し、失礼な感じの視線である。
返事が返り。扉の鍵がカチリと言う音を、立ててあいた。扉が家に開くけれど、其処にはがたいの大きな兵士が、立って此方を覗き込んでくる。此方は知っている顔だった。




