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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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お姉ちゃんは悪役令嬢?6

 森の中をとって返して、既に1時間が経過している。深い森の中から、見通しの良いなだらかな丘の上まで二台の荷馬車が上ってくる。前を走るのは、だいぶくたびれた馬に惹かれた、ハーケンが御者をしている。その、荷台には誘拐犯の2人組が縛り付けられたまま転がっている。ちなみに尻と太股には、まだ矢が刺さったまま放置されている。

 あたしは、前を走る父ちゃんの荷馬車に足並みを、揃えるようにして走らせている。御者台には、あたしとマリア・ド・デニム伯爵令嬢がおんなじ格好をして乗っていた。ちなみに、扱いにくい馬をなだめながら、この荷馬車の馬に言うことを聞かせているのはあたしね。ろくでなしのニックは荷台の上で、気持ち良さそうに寝ている。いびきをかいているから間違いない。昨夜は寝ていないから、仕方が無いかも知れないが、それを言うなら、父ちゃんの方が寝ていなかったはず。

 森をでて、ここまで来れば、本街道が稜線の先に見えてくる。あたし達が使っている道は、本街道から外れた、いわば抜け道である。路面はほとんど手入れされておらず、路面は凸凹で荷馬車の乗り心地は最悪で、ニックのように寝ていることなんか出来ないはずなのだけれど、彼は盛大にいびきをかいている。

 ゲームの設定では、ここから3時間位領都に向かったところで、ようやくマリアの捜索に派遣されている、デニム伯の私兵小隊に出会い。彼らに保護される事に成るはずなのだけれど。そのときとは違い、マリアは生きてるし、犯人は確保してるから、どんな感じになるのかしら。

 これだけでも、あたしが破滅してしまう状況からは遠くなるけれど、シナリオの強制力もあるだろうから、どんな展開になってゆくのか。少なくとも、あたしは自分の妹を殺さなくてすんだので、気が楽にはなるかな。

 乙女ゲームさくらいろのきみに・・・。というゲームは、戦火のなかに咲く攻略対象者ヒロインと切なくもはかない恋を楽しむ物だった。ただ、ゲームのなかの話なら、楽しむことも出来るだろうけども、これがリアルだと全然楽しむことなど出来ない。ましてや、あたしは相違成ることを知ってる上に、あたしがなりきったマリア・ド・デニム伯爵令嬢の行動で、事態を悪化させ国を滅ぼすことになるなんてまっぴらなのだ。

 結論として、あたしは父ちゃんを悪いことを考えないように仕向け、双子の妹の命を助けることにしたのである。これで、あたしは悪役令嬢には成らなくてすむ。たぶんきっと。


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