探偵の真似事 2
あたしはくるりと向きを変えて、リントンさんの顔を眺めながら、小さい声でお腹がすいたと伝える。大変恥ずかしい事ながら、空腹には適わないのだ。この辺りは、マリアでも同じ事だろう。これ以上空腹が続くようだと、怒り出してしまう自信がある。その時には、マリアの言う魔界の言葉で喚き散らす事に成りそうだ。
「これはこれは申し訳ありません。早速ご用意させて頂きます」
いきなり、リントンさんの執事モードのスイッチが入った。
「しかし、血を見た跡でも食事が取れますか」
「これくらいなら、全然問題ないわ。あたしを誰の娘だと思っているの」
「そうでしたね。では何か見繕って来させましょう。私の大事な姫様」
リントンさんは、聞き捨てならない一言を呟いて、此方を覗いている事務員達の方に視線を向ける。その様子からは、此所を離れるつもりが無いようである。あたし的には、マシュー君と二人っきりで話が為たかったのだけれど。上手くは行かない物である。
マシュー君は、木製の椅子に縛り付けられていた。これだけでも、拷問といえるだろう。顔面には痛々しい痣が確り張り付いている。服の所々からも、赤い血の跡が見受けられる。
因みに、この程度の事はこの時代の人達に言わせれば、拷問の範疇には、入らないらしい。仲間意識が、殴るのにも手加減させているらしく。命に危険が及ぶほどでは無いようだ。
派手な打撃音のする暴力だけど、実際には其程のダメージに成る物では無かったのだろう。派手に痣が出来ているから、サボタージュとは言えない程度の勤勉さだと思う。
これなら逃げられる事は無い。あたしは安心して話をする事が出来る。あまり時間を取ることは出来ない。程なくして、リントンさんが遣ってくるだろうから。
「あんた、意識はハッキリしている。あたしのことが解るかい」
この辺りの事はお約束かな。こんな状態にも関わらず、あたしの心が浮き浮きしているのが不思議だ。あたしって元々真面じゃ無いのかも知れないな。これが国を滅亡に追いやった、大罪人の本質だったら嫌だな。
マシュー君はあたしの顔をまじまじと見詰めて、小さく頷いて見せた。
「こんな事になっちまって御免よ。あんたらを守ってやりたかったんだけど、本当に上手く行かないね。でも、あんたらの家族は何もされていないからね。その辺りは当てにてくれて良いと思うよ」
「あんた、何もんなんだ。たんなる猟師の娘には、こうして予備の兵隊を動員なんかできないだろう」
「さあ。あたしにもその辺りは解んないんだ。其れより、あたしと取引をしないか。他の二人が隠れている避難所は何処なんだい。其れを教えてくれたら、あんたの罪を軽くして貰えるように交渉して上げるよ」
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