探偵の真似事
ターラント男爵の執務室を出て、狭い階段を一階分降りたところが、ギルドの職員の仕事部屋になっている。その端っこの小さな部屋が、マシュー君の取り調べに使われている部屋だ。確か普段は、物置に使われていたはずで、各部屋の前に此所に入れられていた荷物が乱雑に置かれている。
あたし達が降りて来た事が解ったのか、扉を開いて覗く職員の顔が合った。皆一様に不安な表情をしている。あたし的には申し訳ない気がしているのだけれど。あたしだってとんだ災難なのだから、勘弁して貰いたいと思う。
小さな部屋の扉の向こうから、でかい男の怒鳴り声が聞こえている。上の階に、このとんでもない怒鳴り声が聞こえてこなかったのが、本当に不思議だった。もしかして、上の階だけには高価な防音が施されているのだろうか。
ターラント男爵の性格を考えると、下の階に音が聞こえないようにしているのかも知れない。あるいは、上の階からあたし達が降りてきたから、お仕事してますよアピールを為ているのかも知れない。案外、そっちの方がありそうだと、あたしは思う。
取り調べしている者も、元を正せば仲間なのだから。本来はこんな時に、彼らに取り調べをさせるべきではないと思う。こういった事も、この国に警察的な物が無いから行けないのだ。
リントンさんが、あたしに待つように合図をすると、問題の部屋の扉を三回叩いた。途端に怒鳴り声が静かになる。これは仕事してますよアピールの怒鳴り声だったらしい。
扉が内に開くと、体格の良い叔父さんが二人顔を出す。因みにこの二人は、あたしが初めてこのギルドに顔を出したとき、一寸したいざこざに巻き込まれた人達だ。簡単に言うと、父ちゃんの目の前で、あたしのお尻に触った気の毒な叔父さん達である。
何処までこのギルドは人材がいないのだろうか。貧乏ギルドなのは知っていたけれど、使える人間がいないのはなんと言って良いのだろうか。
あたしが中を覗くと、マシュー君が顔をボコボコに為れて、横たわっていた。其れなりに手加減していたらしくて、意識も確りしているし。話をすることも出来るようなので、一寸安心する。
「なあ。御嬢本当に、あんたを殺そうとしたのか。此奴はそんな事の出来る奴じゃないと思うんだが」
さっきまで怒鳴っていた、叔父さんが声を抑えて話しかけてくる。
「少なくとも、あたしは矢で狙われたわ。この人は矢を射なかったのだけれど、他の二人は撃ってきたわ。あたしは本当に馬鹿な事をし手くれたと思っているわ。だって、何もしなければこんな大事に成ったりはしなかったはずだからね」
あたしは叔父さんと、同じボリュームで応える。この叔父さんは、同じ狩人として同情して居るみたい。殴って、吐かせようとしている演出をしているけれど、本気で殴っては居ないみたいだった。
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