なんちゃって姫様は我慢できない 13
今こうして堂々巡りの議論をしているって事は、それだけ遅れているって事だ。こうしている間にも、逃げ出した密猟者達の捜索は続いているのだけれど。暗くなったら、見付ける事は不可能に成るのではないだろうか。実際暗くなったら、捜索は不可能だから、打ち切る事に成るだろう。其れこそ、あたしみたいな視力が無いと見付ける事なんか出来ないだろう。
マシュー君が家族を脱出させ様としていた事を考えると、其程遠くには逃げ出していない。もしかすると、領都の中に潜伏しているのかも知れない。今回の騒ぎを見ていたのなら、逃げ出すに違いないのだ。もし、あたしが逃げだそうとするなら、この夜の闇はおあつらえ向きだ。
只、夜の森の中は結構危険なので。血の臭いをさせている彼らには、かなり危険を伴う逃走って事になる。既に逃げ出して、遠くに行っている可能性もあるのだけれども。流石にマシュー君を置いては行かないのでは無いだろうか。
領都の外は安全な場所では無い。夜行性の獣が少なくない森の中では、手負いの人間など、たんなる旨そうな得物でしか無いのだから。森の中にも、狩人達によって築かれた、避難所がある。そこなら夜になっても、其れなりに安全に眠る事が出来る。
只その場所は、狩人達によって秘匿されている事も多くて、同じ狩人仲間でも知らない事もある。勿論狩猟ギルド公認の避難所は、存在しているのだけれど。真っ先に追っ手が差し向けられているらしかった。詰り、連中が隠れているのは、森の中の秘密の隠れ家と言う事になる。
だから、ターラント男爵はマシュー君を吐かせようとしているのだろう。腕利きの猟師であったとしても、夜の捜索は危険すぎるのである。獣に先手を取られたら、それだけで終わってしまうから。日が落ちたら、猟師は家に帰るか、避難所に身を潜めるしか無いのである。
このつまらない話し合いの中で、あの二人組は領都の中には居ない事が解った。居るとすれば、彼らが用意している避難所の中と言う事に成る。でなければ、既に遠くに飛んでしまっているかである。
其れは考えにくい。家族を全員連れて逃げる為に、マシュー君は捕まる危険を取ったのだから。そんでもって、あっけなく捕まったのだけれど。
それでも、あたしは彼に対していい男だなと思っている。本来ならば、自分の妻だけなら連れて逃げられるのに、他の二人の家族も助けようとしていたのだから。取っても素敵なお人好しだと思う。
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