なんちゃって姫様は我慢できない 10
済みません間に合いませんでした。仕事がきつい。
ターラント男爵の執務室の大きな窓から見える、街路の風景が日常に変わった頃。日が陰ってきた町並みは、赤く染まって綺麗で。本当に血で染まらなくて良かった。
只、あたしの空腹は未だに解消されなかった。何しろこの糞面白くもない話し合いは、とても長いものに成ったからだ。途中で席を外して、食事をしたかったのだけれど。
これだけの騒ぎを起こしたのだから、其れなりに責任はあるのだろうから。その当事者であるあたしも、付き合わなければ行けないのだろうけれど。
話し合いの最中に、食事を用意してくれても、罰は当たらないと思うのだけど。兎に角長いこと話し合いが続いたのだ。ターラント男爵は、マシュー君を拷問に掛けても、真実を聞き出そうとしていたから。あたしはそんなことを許したくはなかった。
「其れって、意味があるのかしら」
「勿論ありますよ。人は痛みには抵抗する事は出来ませんから」
と、リントンさんが応える。実に腹の立つことに、其れは間違っては居なかった。
そんな事はあたしだって知っている。苦痛に本当の事を言ってしまうのも、間違いの無いことだと思う。
其れだと軽い罪とは言えない気がする。取り調べで、死んでしまったら、今日一日のあたしの苦労は、何のためにあったのか解らなくなってしまう。
折角ギルドに報告したのにもかかわらず。其れでは自警団と大差ないではないか。自警団の場合には、取り調べなんか遣らない。犯罪者は祭りのネタでしかないのだから。
この世界の常識なのだろうけれど。そういった事は、あたしには耐えられない事だ。知らなかったら、関わろうとも思わなかっただろうけれど。知ってしまったら、黙ってみていられない。
あたしは、本当に捜査の技術を持った者が必要なのだろうなと思う。元不良が考える様な事では無いのだけれど。少なくとも日常的に、拷問的な取り調べには反対したい。特にあの三人組の家族に関しては、止めて頂きたい。
「私はあの人達だって、拷問的な取り調べを為なくても、話してくれると思うのです。少なくとも、私に関わった彼らが五体満足で居られなくなるのは嫌ですわ」
因みにあたしは、バレバレではあるのだけれど。マリア・ド・デニム伯爵令嬢で通している。何しろ、ナーラダのリコではターラント男爵とリントンさんは、話さえ聞いてくれないかも知れないから。流石に長い間マリアの振りをするのはきつかった。処処ボロが出ているのだけれど、リントンさんは見て見ぬ振りを為てくれている。
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