なんちゃって姫様は我慢できない 6
あたしの立場では、リントンさんに文句を言いにくい。何しろ使用人の立場でも、一等上のリントンさんと、未だに見習いメイドの立場だ。あの人は、一応貴族の分類に入っている。良く聞いた事は無いけれど、子爵家の次男だったはず。
リントンさんは、平民でしか無いあたしだと、聞く耳を持っていないかも知れない。でも、こんなだまし討ちみたいな遣りようは、気に入らない。そのお陰で、あの家族は助かったのだけれど。間違ったら、とんでもない争いに発展しかねなかったのだから。
古強者のお爺ちゃん達が、一斉に敬礼を解いた。今度は令嬢らしく、コーツイを為て、踵を返す。今更だけれど、マリアの事が頭をよぎったから。令嬢らしさを演出してみる。あまり上手くは行かなかったみたいである。一応遣ったのだから、彼女に言い訳が出来るかな。無理かも知れないな。
怒って文句を言ってくる、マリアの顔が脳裏に浮かぶ。今から、どうやって彼女の御機嫌を取ろうか、考える事にする。小一時間、黙って彼女の文句を聞いてやるしか無いかな。リントンさんに、マリアの御機嫌を取る手伝いを為て貰おうかな。無理だろうけれど。
リントンさんが取っている方に、視線を向けるとターラント男爵と何か話し込んでいる様子。なんと言っても男爵は、狩猟ギルドの長なのだから、今回の事を納め無ければ行けない立場だ。勿論あたしにも、其れなりに責任がある事は解っている。その重さに関しては、あたしが軽いので、安心しているのだ。
だって、あたしはリントンさんに、填められたのだから。だからといって、全く責任は無いとは言わないけれどね。あたしに出来る事はあまり多くない。これからの事は、その殆どが立派な大人の仕事だ。それでも、出来るなら、彼奴らの家族は何とかして上げたいと思う。マリアには、信じられないお人好しと言われるだろうけれど。
あたしが話し合っている二人に近付くと、好対照な表情が、あたしの事を迎えてくれる。一人は満面の笑み、勿論リントンさんだ。ターラント男爵の方は、実に何ともしんどそうな顔を為ている。
大変申し訳ないのだけれど、ギルドとしてのお仕事を遣って貰わないと、困ってしまうのは明らかなのだから。頑張ってという以外の言葉しかい出ない。実際、後片付けの方が大変だろう。
「さて、これからの方が大変ですよ。兎に角、ターラント君が食事を用意してくれる事に成りましたから、ギルドに向かいましょう」
リントンさんは、実に楽しそうにあたしに声を掛けてくる。あそこには、食堂みたいな物は無かったはずで、何処で食事を用意してくれるのだろうか。
読んでくれてありがとう。




