なんちゃって姫様は我慢できない 5
あたしが近付くと、古強者のお爺ちゃん達が集まってきた。近くでよく見ると、年寄りとは言え、鍛錬を欠かさない所為か、その纏っている衣装の中身は、逞しく力強い。未だに現役のアスリートのようだ。
そして、共通しているのは良い笑顔を為ている。中には、身体のどこかが無くなっている人も居るけれど。実に楽しそうだ。
あたしはこの人達を、血生臭い諍いに成らなくて良かったと思う。この人達は、兵隊を引退して、平和な隠居生活をしていたはずで。その人達が、武器を振り回さずに済んで良かったと思う。
いくら自警団が、素人の集まりだからと言っても。決して侮れるような人達では無い。真面にぶつかったら、怪我人が出てしまうだろう。死人だって、出ないとは限らないのだから。
皆の中に入っていって、あたしは足を止めて、全員に向けて敬礼を捧げた。次の瞬間、これまで笑い合っていた声が静かに成る。ざっという音が、辺りに響き渡り。一斉に敬礼を返してくれる。前世に見た映画のワンシーンのように格好が良い。一寸残念なのは、皆がお年寄りだって事かしら。
「皆さん。ありがとう。助かりました」
あたしは良い言葉を思いつかなくて、我ながら素っ気ないお礼しか言うことが出来なかった。こんな時、本物の悪役令嬢なら、良い感じの台詞を言うのだろうけれど、今のあたしにはこれが精一杯。
「遠慮無く俺達を使ってくれ。未だに俺達は、あの時の誓いを忘れては居ないのだから」
彫り物のお爺ちゃんが、まるで皆を代表するように、そんな事を言ってくれる。後ろに立っていた、孫が居るっていっていたお爺さんが、軽く小突いた。
「格好付けてるんじゃ無いよ。家に帰れば、かかあの尻に敷かれてる癖に」
どっと笑い声が上がる。
「てめえこそそんなこと言えた義理か。孫を説得も出来なかったくせによ。姫様の前で恥をかかせるんじゃ無い」
また、どっと笑い声が上がる。皆似たり寄ったりなのだろう。
「皆さん今日は助かりました。お陰で誰も酷い目に遭わずに済みました。こんな事を言う物では無いのかも知れませんが、お家の人が心配していると思います。取りあえず解散して下さい」
これがあたしの誠意っぱいの言葉だ。本当なら、リントンさんが言わなければ行けない事なんじゃ無いかな。だいたい、このサーコートをあたしに着せたのは、リントンさんなのだから。
読んでくれてありがとう。




