なんちゃって姫様は我慢できない 2
あたしは身体に衝撃が来ないように気を付けて、走り出した。何時もよりはスピードが出せないけれど、まだ大丈夫だ。後は誰かに邪魔されなければ間に合う。きっと間に合うに違いない。ズボンを汚さずに済ませる事が出来る。
腰と背中に付けている矢筒と、短弓が走るのに邪魔になっているけれど。間に合う、絶対に間に合うはずだ。間に合わなかったら、取っても恥ずかしい事に成ってしまう。
十三歳にも成って、お漏らしなんて考えたくも無い事なのだ。衆人環視の中で、お漏らしなんか嫌すぎる。
更にあたしの足は速くなる。本当にギリギリなのだから。早くなるのは当たり前だ。
護衛のお爺さん達を置き去りにして、狩猟ギルトの建物に向かう。因みに、後から追い着いてくる者があった。彫り物のお爺ちゃんである。流石に身軽な爺ちゃんだ。
「姫様、如何しました」
「着いてくるんじゃ無い。これで終わりだぁ」
あたしは更に加速する。足止めされる訳に行かない。あたしは前世の言葉を叫いていた。勿論この世界の人には通じない。
「着いてくるなぁ」
この世界の言葉で、付いて来た彫り物のお爺ちゃんに叫びかける。ゆっくり付き合っている暇は無い。あたしはもう限界になってしまっているのだ。
あたしは一直線に、リントンさんが乗っている馬の側を通って。狩猟ギルドの建物に飛び込むために、走り込む。
「如何しました、姫様」
リントンさんが声を掛けてくる。彼の頬が緩んでいた。邪魔しないで欲しい。
「後で話があるからね。憶えていてちょうだいね」
今のあたしには余裕が無いのだ。文句を言ってやりたいのだけれど、其れが通じるだろうか。無理かも知れないかな……。
あたしは文句を言ってやる事を心に書き留めて、古強者達の間を駆け抜ける。兎に角急いで、トイレに駆け込まなければ行けない。でないと、取っても恥ずかしい事に成ってしまう。
本当なら格好良いのだろうけれど、最後にトイレに駆け込むようになるなんて、何て閉まらないのだろう。所詮あたしは、悪役令嬢マリアでは無いのだから、この程度がらしいのかも知れないな。
目の前に近付いてきた、扉を開いた。後はトイレが空いている事を祈るだけだ。お漏らしなんか勘弁して欲しい。其れもこれも、自警団のモブ顔団長がうだうだしてたからだ。
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