なんちゃって姫様 18
モブ顔の頭目は、今にも気絶してしまいそうな表情で、あたしの事を見詰めてくる。自警団の団長に成るくらいだから、其れなりに自我の強い人だと思っていたのだけれど。どうやらそう言う訳でも無いらしい。本当にこの組織は大丈夫なのだろうか。
あたしの知っている頭目では無かったので、最近入れ替わったのだろう。その時には、あたしはマリアのメイドとして、大夫後方から眺めていたのだけれど。明らかに別人だった。
「グレイ君は如何したのかね。確か団はグレイ君が取りしきっていたはず。それに、君のような者が団長に成ったとは聞いていないのだが」
ターラント男爵が、あたしが口を開く前に、そのモブ顔団長に声を掛けていた。少し声の中に、マウントを取るような響きがある。たぶん、彼はこのメンツの中で、自分が最も位の高い人間だから、強引に事を治めることが出来ると思っているのだろう。
あたし的には、彼に事を治める事が出来るのなら、宜しくお願いしたいところだ。そういった事が出来なかったから、こんな事になってしまっているのだから。あまり期待の出来ないことなのだとは思う。
「えっと、前団長は昨夜お亡くなりになりました。私は皆の総意によって、選出されたマイクという者です。ご挨拶の前に、このようなことに成ってしまって、はなはだ残念に思っております」
「君がこれからの自警団の団長と言う事なのだね。それならば、君に決断して貰おう。速やかに団員を引かせたまえ」
「其れは簡単に出来ません。領都の治安を任されている者としては、犯罪者とのその家族は罰を受けさせなければ、いけないことに成っております。その為に皆集まってくれたのです。何も得ないで引くわけにはいかないのです」
周りで聞いている、自警団の若い衆達が賛同の声を上げた。ここに来ている連中の表情には、折角のお楽しみが奪われた事による、怒りにも似た感情が伝わってくる。久しぶりの、獲物をさらわれた獣のような表情をしている。
ここにあるのは、正義をは裏腹な欲望でしか無い。犯罪者に対する怒りでは無く、欲求不満のはけ口としの、生け贄を目の前から奪っていった者に対する怒りでしか無い。まかり間違えたら、暴動に発展してしまいかねない、雰囲気が在った。
あたしは、目の前に立っているなんちゃって頭目が、後ろにいる若い衆達の、操り人形にしか見えなくなってきた。恐らくこの人には、自警団の若い衆達の意見を纏めることなど出来ない。皆の雰囲気に流されているだけなのだろう。ものすごく軽い神輿だ。
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