なんちゃって姫様 15
あたしの中の悪役令嬢マリアのイメージで、言葉を紡いでゆく。あのゲームの中で、声優さんが演じていた怖い時の、彼女に寄せた話し方だ。いまはあたしなのだけれど、まだ子供子供為ているあたしの話し方だと、説得力が無い。良い大人が、十三歳の娘の言う事を聞いてくれるか、かなり心配である。
それでも聞いて貰わないと、リントンさんが最悪の決断をするかも知れない。そうなったら、どれだけの犠牲者が出るか解らないのだ。その原因が、あたしの行動だなんて、考えたくも無い。何としても、自警団にはお家に帰って貰うのだ。
実際、こんな事になったのも、リントンさんがあたしにこのサーコートを着させたのが原因なのだ。お年寄りの手助けが無かったら、狩猟ギルドに逃げ込む事も出来なかったのかも知れないから。強く文句も言えないのだけれど。
自警団の中で、混乱していることが肌感覚として感じられる。そりゃ混乱もするとは思う。何時もなら、ここまで大事になる前に、撤収為ていたはずなのだ。其れが、正式な使者を迎える事に成っているのだから。混乱もするよね。
今まで、責任を持った指揮官の居ない集まりだから、思考することの無い正義を振りかざす集まりでしか無い。勢いだけで動いている、暴力集団でしか無いかった。その問題は、あたしが領都に引っ越して来た時に気が付いていたけれど。真逆こんな形で、あたしが関わる事に成るとは思っていなかった。
確か団長は決められていたはずだけれど、彼は自警団を把握しているわけでも無くて、皆の合意に基づいて物事を決めていた。一見、民主的な組織に見えるけれど。その本質は、無責任な正義を振りかざす暴力集団でしか無い。
少なくとも、あたしはこの集団は危ない若い衆でしかないと思っている。確かに、あたしの村の中にも自警団に相当する、若い衆の集まりはある。でも、村の人間の顔を全員が知っている中での、自治グループと知らない人間の方が多い、領都の自治組織は根本的に異なる物だと思う。だって、正義の名の下に知らない人間相手なら、何処までも残酷になれるのが人間なのだから。
もしかしたら、リントンさんはこの機会に、自警団を本当に無くしてしまいたいと考えているのかも知れない。だから、あたしに奥様のサーコートを着させたのだろう。
あたしはうっかり、リントンさんの事を信じたばっかりに、こんな大事になってしまった。もしも、そうなら何としても、リントンさんが予備兵を動かす前に、自警団の若い衆を、急いで解散させなければ行けない。
あたしの胃が何だかとっても痛くなってきた。
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