なんちゃって姫様 13
あたし達は、自警団の若い衆に、取り囲まれる格好で、彼らの頭目との面会を打診する事になった。ここまでに来る以前に、狩猟ギルドの名目で、自警団の頭との話し合いを打診していたのだけれど。どうやら、その言付けは届いていなかったらしい。いくら何でも、素人の集団だからと言っても、一寸酷すぎる。こんな状況で、街の治安を任せる事なんか出来ないと思う。
兎に角ここに居る自警団は、言ってしまえば烏合の衆だって言うことだ。あたしが所属していた、チームでさえボスに相当する人間はいたのである。良かれ悪しかれ、そのチームのカラーを作っていたのは、そのボスの考え方だった。
「私はこの狩猟ギルドの、長を務めているターラント男爵である。今回の件について、団長と話が為たい」
と、ターラント男爵が少し裏返った声を張り上げていた。彼の腰に下げている剣が、気のせいか震えているように見える。
他聞彼は、こんな修羅場の経験が無いのだ。勿論あたしも無いのだけれど、一回死んでるので意外に肝が据わってしまっている。本当は可愛くないから、こんな時には怯えて見せた方が良いのだろうけれど、何故か内心浮き浮きしてしまっていた。
あたしはなり行で、こんな立場に立ってしまったけれど、不思議と落着いて周りを観察する事が出来ていた。集まってきている、若い衆の殆どが、半分は遊び半分である事が解る。だって、近くによって解ったことは、今回の件で入ってくる実入りで、飲み屋に行く話なんか為ていたし、何時もと違って、予備兵のお年寄りが出てきた事の、意味がわかった居なかった。
何しろ、一緒に出てきたあたしに対して、下世話な掛け声を掛けてくる者すら居たのである。中には軟派擬きの声も有った。そう言う連中は、マリアの顔を見たことも無いのだろう。気の毒だけど、後で怖い思いを為て貰う事とにする。
「初めまして、私はマリア・ド・デニムと申します。本当なら、このような形で、貴方達と会いたくは無かったのですけれど、兎に角会見を望みますわ」
あたしが名乗ると、自警団の若い衆が一歩引いて、響めきが上がる。これだけの男衆の、驚きの声は怖いくらいの音量になった。それはそうだろう、領主の娘が武装して、民衆の前に出てきたのだから。その後ろには、退役したとは言え、未だに鍛錬を欠かさない、予備兵が武装を為ていつでも突撃できる、陣形を取っているのだから。
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