なんちゃって姫様 12
もしかすると、あたしがマリアを助けたから、色々と余計なフラグが立ってしまったのかも知れない。だからと言って、今更マリアを殺すわけにも行かない。彼女に成り代わるなんて出来ないのだ。
今のあたしに出来る事は、目の前に立ちはだかってきた問題を正面から、少しでも良い方に向かうようにするだけだ。このマルーン地方だけでも良くなりさえすれば、隣国が戦争を仕掛けてくる事は無いに違いないのだから。
今はどうにかして、自警団が振り上げている拳を下ろさせる。そうしないと、本当に私兵団の出動何て言う事に成る。そうなったら、怪我人だけでは済まないかも知れない。何でこうなってしまったのだろう。
今までの自警団なら、かなりやり過ぎではあったけれど。こんなに犯人を捕らえることに、拘ったりしていなかった。もっと単純で、からっとしていた気がする。捕らえる事が出来なかったからと言って、ギルドが保護を宣言している案件に対して、集団で圧力を掛けるような事を為なかったはずだ。
まして、古強者達が出張ってきているにも関わらず。相も変わらず犯人と、その家族の引き渡しを要求してくるなんて、本当に初めての事だったらしい。だいたい、これはギルドの中の事でしか無いのにも関わらず。自警団が出てくる事自体、可笑しな話なのだ。
護衛を買って出てくれた、古強者四人は実に良い顔を為て、まるで凱旋行進をするように、あたしとターラント男爵とクリス執事を囲んで、行進を始めた。勿論相手次第の事なのだけれど、この交渉をするに当たっては、多少の危険が伴う。そういったリスクは仕方が無い。街の中を歩くだけだって、其れなりに危険はあるのだから。
実際、ターラント男爵が嫌がっていた感じからすると、結構危険な事なのかも知れない。一応、お互いに中間地点で、話し合おうと考えているけれど。本当に相手が真面かは解らないし。あちらだって、あたしの事が解っていないのだから。
「姫様。万が一奴らが、可笑しな事をしたとしても。安心して下さい。命に代えましても、姫様のお命はお守りいたします」
孫が居るって言っていた、お爺さんが他には聞こえないように囁いてくる。少し恥ずかしそうにしていた。
彫り物のお爺ちゃんが、腕を上げるとあたし達の周りに居た人達が、一斉に間隔を開けて、綺麗に並んだ。そして、歩む前にぽっかりと道が開ける。まるで、訓練をずっとしていたみたいに、お年寄り達は陣形を取った。
其れを見て、あたしは何だかドキドキしていた。前世で見た、ファンタジー映画のワンシーンを見ているみたいだ。惜しいことは、皆年寄りで武具も色々だったことかな。
読んでくれてありがとう。




