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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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夜の散歩 6

読んでくれてうれしいです。


「次は当てる。右に六度上に三度。撃て」

 あたしの合図で、父ちゃんは準備済みの弓を撃つ。弦を弾くような音ともに、風を切る矢の音を残して、さっきと同じように、矢が曲線を描いて飛んで行く。相手が今度は、回避行動をとっさにすることを見越して、当たりを付けての攻撃である。

 彼は見えないながらも、避けようとして、動くはずで、右か左の二択。あたしは右によけると読んだ。動物は読むことは難しいけど、人間は意外に読める物である。ちなみに、こういった事は、転生してから学んだことで。前世の学は、もしかして、何も身についていないのかも。よくラノベなんかでは、前世の知識でチートする話があるけど、あたしには無理だわ。彼氏と遊ぶことしか考えてなかったもんなー。

 読みは当たった。彼は避けようとして、矢の前に出てくる。悲鳴を上げて、倒れるけれた。それでもまだ運が良いらしく、矢は太股に刺さっている。少なくとも急所ではない。これで逃げることも、反撃するために近づくことも出ないだろう。これ以上の荒事は避けたい物である。めんどいし。

「えーと。これで、抵抗を止めてくれると助かるんだけど」

 あたしは、彼に声を掛けた。勿論父ちゃんは、次の矢を引き絞っている。いつでも相手の命を刈り取ることが出来る体制を取っている。伯爵夫人の手前、こいつにあまり時間を取られているわけにも行かない。

「こちらの射程距離は、四百メートル。どうやっても逃げ切れないよ。ちなみに、暗闇の恩恵はないからね。逃げ切ることは諦めて、手をあげな」

 あたしとしては、可能な限りドスのきいた声を出してるつもりだけど、とっても可愛らしい声にしか聞こえない。これで言うことを利いてくれるか不安になる。まだ、悪役令嬢の声にはほど遠い。子供の声よね。

 ちなみに射程四百メートルは、はったりである。届かせることは出来るけど、まず当たらない。ただ、二百メートルぐらいまでなら、十分当てることが出来る。其れは、証明できたと思う。この一発だけで、相手の戦意をくじくことが出来たかは、あたしのみでは判断が出来ない。まだ弓を放さないから、どうなるか判らなかった。

 後ろから誰かが近づいてきた。後方を守っていた、騎兵のオッちゃんだった。馬を下りてやって来た。手伝うつもりなのかな。

「たいしたもんだな。おまえは昔から、弓だけは一級品だったが、こんな真似も出来るようになってるんだな」

「まだ奴は死んでいない。不用意に近づかない方が良い」

 父ちゃんがぼそりと呟く。

「こいつは、小さな樽を持っている。恐らく毒か、油だろう。仕留めちまった方が楽だが、うちの娘の前で、あまり殺しは見せたくない」

「なら、なぜ連れてきた」

 あきれたようにオッちゃんが言う。

「その方が早く事が済むと思ったからだ」




 



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