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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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なんちゃって姫様 9

「皆さん、これから自警団の人達に、話を為に行きたいと思います。決して安全ではありませんが、私に力をお貸しください」

 あたしは出来るだけ多くの人に聞こえるように、悪役令嬢マリアの台詞を声に載せる。なるべく信頼を得られるように、心の底から声を出真似をすると、真似をすると、かなり遠くの方まで声が聞こえる。舞台映えのする声だ。

 あたしは思いきって、可能な限り丁寧なコーツイを遣って見せた。今はドレスを着ていないので、本当は敬礼の方が良いのかも知れないけれど。最敬礼となる仕草が解らなかった。それに、平民がその事に気付いてくれるかは、微妙だと思ったからである。

 あたしの周りに集まってきていた、お年寄り達が歓声を上げた。そして、ニコニコしながら手を上げてくれる。どうやら全員が付いて来てくれるらしい。そして、後から気が付いたお爺ちゃん達も手を上げ始めた。

 この時空気がすごく緩くなった。これまでは戦場にいるみたいな、剣呑な緊張感があったのだけれど。何処か遊びに、孫とお出駆けてきた感じが為た。実子、あたしとお爺ちゃんとの年来差は孫くらいの年の差がある。

 それにマジ物の戦争と比べたら、この程度のいざこざは遊んでいるのと変わりないのかも知れない。

 折角手を上げてくれても、あたしは全員で交渉に行くことは、出来ないことを知っている。一緒に行こう物なら、突然小競り合いになるかも知れないからだ。其れでは話し合いにもならない。

 停戦の作法なんか知らないし、どう話を持っていったら良いかも解らないけれど。このままここに、皆がいることは、危険だと言うことは判る。急いで自警団を解散させて、あたしが集めてしまった予備兵の人達も、日常に戻って貰わないと行けない。だってヤバすぎるし。

 本当はあたし一人で、密猟者の人達を匿おうと思ったのに。こんな事になってしまって、困ってしまう。

 あたしの隣に突っ立っている、ターラント男爵はなるべく存在感を出さないようにして居るみたいだ。実に影が薄くなっている。自分の方に累が及ばないようにしているのだろう。出来るなら、あたしも影を薄くしていたいと思う。出来ないけれどね。

 貴族の癖に、責任をどう思っているのだろう。貴方がそんなだから、あたしが出張ることになったのだと言いたい。其れと、一番責任の重い立場の、リントンさんは何処に行っているのだろう。これだけ街の中が騒がしくなっているのだから、出てきても可笑しくないはず。

「私のために手を上げてくれて、取っても嬉しいわ。出もね。流石に全員で、話し合いに行くことは出来ないと思うの。だから、四人だけ一緒に来て下さる」

 優しげな台詞だけれど、有無を言わせない響きがある。その台詞を言いながら、あたしは何だか怖い気がする。命令することになれきった人間の言葉だ。このまま悪役令嬢には、成りたくは無いのだけれど。今回の修羅場が済んだら、ちゃんと普通のメイドさんに戻れるのだろうか。心配に成る。




読んでくれてありがとう。


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