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山猫は月夜に笑う 呪われた双子の悪役令嬢に転生しちゃったよ  作者: あの1号


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なんちゃって姫様 3

「ねえ、男爵様。貴方がギルドの長としての職務を全うしてくれれば宜しいのではないかしら」

 あたしは、マリアの言いそうな事を言ってみた。他聞そのような事を、率先して遣ってくれないとは思うのだけれど。この叔父さんには少しばかり頑張って貰わないと行けない。何時ものように有耶無耶にはして欲しく無いかった。

「一寸待ってくれ。御前にそんなことを言われる筋合いでは無いだろう。そのサーコートには驚いたが。何処で手に入れたのか知らないが、無断でそんな物を使ったら、いくら御前の親父が馬鹿みたいに強くても、罪になるだろう。たんなる御屋敷のメイドの台詞とは思えないね」

「だって、ギルドは会員の生命材差に対して責任があるのでは無くて。勿論犯罪者に対しては、その限りでは無いのでしょうけれど。その家族まで、罪人扱いする物では無いと思うわよ。それにこのサーコートは、リントンさんに着ていなさいって渡された物なのよ。このサーコートにそんな意味があるなんか、知らなかったわ」

 このギルドの建物に逃げ込んでから、既に三十分が経っていた。あまり長いこと、自警団とにらみ合っても居られない。時間が経てば経つほど、収拾が付かなくなっていくような気がして仕方が無かった。

 もしも、私兵団がこちらに向かって来るように成ったら。其れこそ大事に成ってしまう。最悪死人が出ても可笑しくない。あたしはそんな事は嫌なのだ。

「私はね。ギルドの会員証に書かれている約束事に対する文章を読んでいるのよ。あまり馬鹿に為ないで欲しい物ですわ」

 だんだん地金が出てきた。段々まどろっこしくなってくる。

「良いからさっさと自警団に、ギルドが責任を持って解決するから、早いとこ散るように言えば良いんだ。そうすりゃ、連中だって大人しく解散するだろうよ。あんまり時間が掛かっていると、何処で怪我人が出るか判んないだろうが」

 ターラント男爵は困り顔を為ながら、隣に立っている使用人さんの顔を盗み見ている。普段からそう言う人だとは知っていたけれど、こう言った修羅場で責任をとる事が出来ない。立派な大人なのに、何時も事を有耶無耶に為て済ましているから、会員が方を守らなくなってしまう。長が守らないこのに、下が守ろうとするわけが無い。

「責任は御前にも在るだろう。そんな物を着て、街の中を走り回るから。こんな大事に成った。だいたい御前は何様なんだ」

「あたしはマリア様付のメイドだよ」

「そのメイドがこんな騒ぎを起こしたって訳だ。その責任は如何してくれる」

 何だかぐるぐる回っている気がする。この執務室に来てから、あたしはこの問答を繰り返している。あまりこんな事を為ていると、私兵団が出てくる。そうなったら、この程度で済まないかも知れない。なんと言っても、私兵団の治安維持活動は軍事力の行使なのだから。絶対怪我人が出る。

読んでくれてありがとう。

誤字報告ありがとう。


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