なんちゃって姫様 2
これだけの人達に、何かを命じることなんか出来ない。今の処、皆大人しく聞いてはくれて居るみたいだけれど。いつまで小娘の言うことを聞いてくれるか判らないじゃ無いか。こういった事は、責任の取れる人間の仕事だと思う。
それにマリアの振りもここではしづらい。何しろこのギルドの人達は、あたしのことをよく知っている。小さな時から、このギルドにはお世話になって居るのだから。
あたしは後ろに立っている二人に顔を向けた。ライナス・ターラント男爵とその執事さんが立っている。二人とも困惑した表情を為ている。他聞あたしも、同じ様な顔を為ているだろう。こう言う時は、立派な大人が前に立って、何とかしてくれるのが本当だと思う。子供に何かを期待してくれても困ってしまう。
確かに、あたしが悪いとは思うのだけれど。勢いで動いた挙げ句、自警団と予備兵達のいざこざに、弱小ギルドを巻き込んだのだから……。それでもどうしたら良いか判らなかったから、兎に角ギルドの会員と家族を守るという、ギルドの建前を信じて逃げ込んだ。
勿論、密猟者達まで、守る訳にいかないだろうけれど。その家族は守って貰っても、良いのではないのだろうか。そうしないと、なんの罪も無い人達まで、自警団の餌食に成ってしまう。
本当は、伯爵家の領地に、前世のような警察があれば良かったのだけれど。そんな物は、今のこの国には存在しない。私兵団は存在するけれど、其れは軍隊でしか無く。犯罪を取り締まることを目的とした、組織では無い。その辺りは、賢者様と父ちゃんに聞いて知っていたから、そういった事を期待できない。
確かに兵隊さんも、捜査することはあるのだけれど。其れはあくまでも領地に対する破壊工作を、するような人を取り締まるための物だ。実際半年前の鼠退治は、入り込んできている間者を、間引くための作戦だったらしい。
平民の犯罪を取り締まるのは、平民を中心とした自警団の仕事だった。だから、思い込みと色々な思惑から、時には無実な人を寄って集って、私刑にすることも少なくなかった。だからあたしは動くことに為たんだ。
やっぱりそう言うのって、何となく違う気がするから。何とか秘密裏に、逃がして上げようと思ったのだけれど。とんでもない大事になってしまった。
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