なんちゃって姫様
狩猟ギルドの建物の周りには、不揃いな武具で身を固めた年寄りに囲まれている。その更に外周には、自警団の若い衆がまとまって此方を睨み付けているのが判る。連中は大きく思惑が外れて、祭りをすることが出来なくなった事に、ものすごく戸惑っても居るのだろう。
あたしはギルド長の執務室の窓から、外の様子を眺めていた。真逆こんな大事になるとは想ってもいなかった。自警団に見つかる前に、三人組の家族を匿ってしまい。逃がしてしまおうと思っていただけなのだ。其れが、見ようによっては、内戦じみたことになろうとは思いもよらなかった。
こんな事になった最大の要因は、あたしが纏っているサーコートなんだろうけれど。実際ここまで自警団の若い衆が、あたし達に手出しが出来なかったのは、古い武具を持ち出して出来てくれた年寄り達のお陰だった。出てきてくれた人たちの数は、そんなに多くは無かったけれど。自警団の若い衆よりは多かった。
しかもあたしの言うことを良く聞いてくれて、若い衆とぶつからないように気を付けてくれた。それに皆、腕に自信のある人達ばかりだったらしく。どことなく凄味があるお年寄りだった。
これは、ここまで一緒にいてくれた彫り物のお爺ちゃんが、教えてくれた事なのだけれど。今出てきてくれている人たちは、ずっと前にマルーン地方が、マルーン王国と呼ばれていた時に、義勇兵として戦地に向かった生き残りらしかった。
その頃は、あたしより幼かった奥様に、率いられていたらしい。その時に、奥様が纏っていたのが、あたしが纏っているサーコートだそうだ。そして、このサーコートは義勇兵の招集を意味しているらしい。だから、今のあたしはマルーン王国の姫様なのだそうだ。
姫が戦うのなら、予備兵の誓いを立てた者は共に戦うのだそうだ。其れが幾万の敵が居ようとも、姫が戦う意志を見せている限り。最後の一兵となっても、侵略者に対して、武器を振るう者なのだそうだ。
完全に、リントンさんに填められた。とんでもない権力を、今のあたしは持っている。なんちゃってマリア処の騒ぎでは無い。ここに出てきている人たちの命を、あたしの一言で左右しかねない。そんな重たい裏設定なんか知らない。
「リコ、如何する詰りなんだ」
あたしの背中越しに、ライナス・ターラント男爵が困惑した声を掛けてくる。大夫声音に余裕が無い。其れもそうだよね。
あたしだって、如何した物か考えても解んないよ。十三歳の女の子でしか無いのだから。一応、奥様の実子らしいけれど。これまで、父ちゃんに育てられたお陰で、そこそこ戦ったりすることが出来る身ではあるのだけれど。兵士の指揮なんか執ったことなんか無い。
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