ピクニック日和 6
狩猟ギルドの建物の周りには、一寸引くほどの人数が集まっていた。明らかに自警団の若い衆と、年季の入った武具で武装した、年寄りが緊張状態を保っている。訓練された軍隊で、優秀な指揮官が頭上にいるのなら判るのだけれど。自警団に為ても予備兵達に為ても、真面に指揮することの出来る人間はいないはずで、五月雨的に小競り合いに発展してしまうはずなのだ。
だから、ヘクター・リントンの指揮能力が必要と考えており。最悪は私兵団を投入することも視野に入れていたのである。ナーラダのリコの行動によって、治安維持という軍を動かす大義名分をえて、自警団を物理的に解散させる。
騒ぎを起こした、ナーラダのリコにも責任をとらせる。そうすることで、デニム家の影響力の回復を、果たそうとした。
だけれど、未だ危険な状態ではあるけれど。紛争と言うには無理がある状況に収まっていた。
自警団には、絶対的な命令系統が無い。いわば烏合の衆なのである。その集団にとって、古強者達は良く訓練された動きを見せる。いわば本職の戦闘集団である。其れが、木賃とした指揮官の下、見事な動きを見せて、自警団達を牽制している。
ヘクター・リントンの見るところ、ナーラダのリコが助けたかった者達は猟師ギルドの建物の中に、避難為ているようである。正直これほど早く密猟者の家族を保護できるとは思っていなかった。ギルドの長の様子からは、積極的に動く気配が無かった。動いたとしても、アリバイを作る程度の行動くらいと踏んでいたのである。
あの様子から、ギルドの長の胃に穴が空いているのでは無いだろうか。あの男は何も遣らずに、そこそこの生活が出来れば良いと考えているのだ。其れがこの騒ぎである。
「本当に奥様に良く似ていらっしゃる。お陰で、これから退屈しないで済みそうだ」
ヘクター・リントンはにっと笑うと、馬上から降り立ち。両脇を守るように立っている下僕達に呟く。
「姫様とお目にかかりたいと伝えておくれ」
結構無茶ぶりである。何故なら、自警団と予備兵の囲みを抜けなければ、ナーラダのリコにたどり着くことが出来ないのだから。
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